スマホで統計学

09

時系列データの記述

人口、売上、物価など、時間とともに変化するデータを時系列データといいます。このレクチャーでは、時系列データの変化を「差」「変化率」「平均変化率」「指数」で表す方法を整理し、代表的な価格指数であるラスパイレス指数とパーシェ指数まで理解します。
このページのゴール

時系列データの変化を表す代表的な指標を使い分け、ラスパイレス価格指数とパーシェ価格指数の違いを説明できるようになる

STEP 01

時系列データとは何か

時系列データとは、 時間という変数に沿って観測されたデータです。

たとえば、毎年の出生数、毎月の売上、毎日の気温などは、 すべて時間軸をもった時系列データです。

\((t,y_t)\)
\((t+1,y_{t+1})\)
時間
横軸に時間、縦軸に観測した値をとります。

ある時点を \(t\) とすると、 その時点で観測された値を \(y_t\) と表します。

そこから1期間後は \(t+1\)、 そのときの値は \(y_{t+1}\) です。

ここがポイント
時系列データ = 時間軸に沿って観測されたデータ
STEP 02

差と変化率で1期間の変化を見る

時系列データの変化を表す最も基本的な方法が です。

\[ y_{t+1}-y_t \]
\(t\) 時点から \(t+1\) 時点まで、 値がいくつ増えたか・減ったかを表します。
\(t\) 時点
\(100\)
\(t+1\) 時点
\(110\)
\(110-100=10\)

一方で、 「10増えた」という差だけでは、 元の値に対してどれくらい大きな変化なのかは分かりません。

そこで使うのが変化率です。

\[ \frac{y_{t+1}-y_t}{y_t} \]
変化した量を、 変化する前の値 \(y_t\) で割ります。
100 → 110 の場合
\[ \frac{110-100}{100} = 0.10 \] 10%増加
\(y_{t+1}-y_t\)
いくつ変わった?
変化率
\(\displaystyle \frac{y_{t+1}-y_t}{y_t} \)
何割変わった?
ここがポイント
差は「いくつ変わったか」
変化率は「元の値に対して何割変わったか」
STEP 03

平均変化率で複数期間の変化を見る

次は、1期間ではなく、 複数期間を通した平均的な変化率を考えます。

たとえば、100だった値が 5年後に120になったとします。

基準時点
100
5期間
5年後
120

ここで、 毎年同じ平均変化率 \(w\)で変化したと考えます。

1年後には元の値に \(1+w\) を掛け、 5年間ならそれを5回掛けるので、

\[ y_T = y_0(1+w)^T \]

したがって、 T期間の平均変化率は、

\[ w = \left( \frac{y_T}{y_0} \right)^{1/T} -1 \]

100から5年後に120になった例なら、

\[ w = \left( \frac{120}{100} \right)^{1/5} -1 \] \[ \approx 0.037 \]
平均すると、1年あたり約3.7%ずつ増加したことになります。
なぜ 20% ÷ 5 ではない?
毎年の変化は、前年の値に対して起こります。
そのため、複数期間では倍率を掛け合わせる必要があります。
ここがポイント
T期間の平均変化率
\[ w= \left(\frac{y_T}{y_0}\right)^{1/T}-1 \]
STEP 04

指数化して基準時点と比べる

時系列データでは、 ある時点を基準時点として、 他の時点の値を比較することもあります。

基準時点を \(s\)、 比較する時点を \(t\) とすると、 単純な指数は次のように表せます。

\[ I_t = \frac{y_t}{y_s} \]
基準時点 \(s\) の値を1としたとき、 \(t\) 時点の値が何倍かを表します。

イメージとしては、 基準時点をモノサシの1目盛り と考えます。

基準
100
比較時点
120
基準を100とすれば、120は基準の1.2倍です。

実務では、 基準時点を1ではなく 100として表すことがよくあります。

\[ I_t = \frac{y_t}{y_s} \times100 \]
ここがポイント
指数化 = 基準時点をモノサシにして他の時点を比較する
STEP 05

ラスパイレス価格指数を理解する

ここまでは、 1つの変数を基準時点と比較してきました。

しかし物価のように、 複数の商品価格をまとめて比較したい 場合があります。

その代表的な方法が ラスパイレス価格指数です。

\[ L_t = \frac{ \sum_i p_{ti}q_{0i} }{ \sum_i p_{0i}q_{0i} } \]
\(p\):価格
\(q\):数量
0:基準時点
\(t\):比較時点
\(i\):品目

この式で最も大切なのは、 数量が分子も分母も \(q_0\) になっていることです。

ラスパイレスの発想
基準時点と同じ数量を買ったとしたら、
費用はどれくらい変わった?

具体例で見てみましょう。

品目
\(p_0\)
\(q_0\)
\(p_t\)
\(q_t\)
A
100
10
120
8
B
200
5
220
6

ラスパイレスでは、 比較時点になっても 基準時点の数量 \(q_0\)を使います。

\[ L_t = \frac{ 120\times10+220\times5 }{ 100\times10+200\times5 } \] \[ = \frac{2300}{2000} = 1.15 \]

基準時点を100とするなら、

115
基準時点と同じ数量を買うと、 費用は15%高くなる

基準時点の数量を固定して使うため、 比較するたびに数量のウェイトを作り直さなくてよい、 という特徴があります。

ここがポイント
ラスパイレス = 基準時点の数量 \(q_0\) を固定して価格を比較する
STEP 06

パーシェ価格指数と比較する

ラスパイレス価格指数と並んで重要なのが、 パーシェ価格指数です。

\[ P_t = \frac{ \sum_i p_{ti}q_{ti} }{ \sum_i p_{0i}q_{ti} } \]

ラスパイレスとの最大の違いは、 数量に比較時点の \(q_t\) を使うことです。

ラスパイレス
\(q_0\)
基準時点の数量
パーシェ
\(q_t\)
比較時点の数量
パーシェの発想
比較時点と同じ数量を買ったとして、
基準時点より費用はどれくらい変わった?

先ほどと同じデータで計算すると、

\[ P_t = \frac{ 120\times8+220\times6 }{ 100\times8+200\times6 } \] \[ = \frac{2280}{2000} = 1.14 \]

基準時点を100とすれば、 パーシェ価格指数は 114です。

違いは「どの時点の数量を重みにするか」
ラスパイレス
115
\(q_0\)
パーシェ
114
\(q_t\)
ラスパイレス
パーシェ
数量
\(q_0\)
\(q_t\)
イメージ
基準時点の
買い方を固定
比較時点の
買い方を使用
ここがポイント
ラスパイレスは \(q_0\)
パーシェは \(q_t\)
どの時点の数量を重みにするかが違う
SUMMARY

時系列データの記述を整理する

いくつ変わったか
変化率
何割変わったか
平均変化率
複数期間の平均的な変化率
指数化
基準時点をモノサシにして比較
ラスパイレス
基準時点の数量 \(q_0\) を使う
パーシェ
比較時点の数量 \(q_t\) を使う
最後に
時系列データでは、
「どれだけ変わったか」と
「何を基準に比べるか」を考える
NEXT STEP

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