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母分散・母比率の仮説検定

1標本問題として、母分散と母比率に関する仮説検定を学びます。母分散ではカイ二乗分布、母比率では大標本における正規近似を利用し、検定統計量が棄却域に入るかどうかから帰無仮説を判断します。
このページのゴール

母分散・母比率について帰無仮説を設定し、それぞれカイ二乗分布・標準正規分布を使った検定統計量と棄却域を求め、仮説検定を実行できるようになる。

STEP 01

母分散と母比率の仮説検定を見ていく

このレクチャーでは、 引き続き1標本問題の仮説検定として、 母分散の仮説検定 と 母比率の仮説検定 を見ていきます。

基本的な考え方は、 ここまで学んできた区間推定と共通しています。

仮説検定でも基本の流れは同じ
手順0
帰無仮説・対立仮説を設定
↓
手順1
何がどんな分布にしたがうか整理
↓
手順2
検定統計量が既知の分布にしたがう形へ
↓
手順3
棄却域に入るか判定

違いは、 区間推定では母数の 信頼区間 を求めていたのに対し、 仮説検定では帰無仮説のもとで 観測された値がどれほど極端か を見る点です。

今回も
「何がどんな分布にしたがうか」 を起点に考える。
STEP 02

母分散|手順0:帰無仮説を設定する

まずは、 母分散 \(\sigma^2\) に関する仮説検定です。

前提として、 母集団は正規分布にしたがう 正規母集団 とします。

帰無仮説では、 母分散を具体的な値 \(\sigma_0^2\) に固定します。

帰無仮説
\[ H_0:\sigma^2=\sigma_0^2 \]
対立仮説
\[ H_1:\sigma^2\neq\sigma_0^2 \]

今回は、 母分散が \(\sigma_0^2\) より大きい場合も小さい場合も考える 両側検定 とします。

片側だけを問題にする場合には、

\[ H_1:\sigma^2>\sigma_0^2 \] または \[ H_1:\sigma^2<\sigma_0^2 \]

のように設定することもできます。

手順0
まず \(\sigma^2=\sigma_0^2\) という具体的な世界を帰無仮説として設定する。
STEP 03

母分散|手順1:正規母集団から標本を考える

帰無仮説

\[ H_0:\sigma^2=\sigma_0^2 \]

が正しい世界を考えます。

正規母集団から サンプルサイズ \(n\) の標本

\[ X_1,\ldots,X_n \sim N(\mu,\sigma_0^2) \]

を得たとします。

正規母集団から標本を抽出
帰無仮説のもとでは 母分散が \(\sigma_0^2\)

母分散を検定したいので、 次は標本の ばらつき に注目します。

STEP 04

母分散|手順2:カイ二乗分布が使える形にする

正規母集団の母分散を扱うときに登場するのが、 カイ二乗分布 でした。

標本平均 \(\bar X\) からの偏差平方和を使うと、 帰無仮説のもとで

\[ \chi^2 = \frac{ \sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar X)^2 }{ \sigma_0^2 } \]

と整理できます。

不偏分散

\[ \hat\sigma^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n}(X_i-\bar X)^2 \]

を使えば、

\[ \chi^2 = \frac{ (n-1)\hat\sigma^2 }{ \sigma_0^2 } \sim \chi^2(n-1) \]

となります。

なぜ自由度は \(n-1\)?
偏差を母平均 \(\mu\) ではなく 標本平均 \(\bar X\) から計算する
↓
自由度を1つ使う
↓
自由度 \(n-1\)

そして、 この \(\chi^2\) が母分散の仮説検定における 検定統計量 です。

手順2
\[ \chi^2 = \frac{(n-1)\hat\sigma^2}{\sigma_0^2} \sim\chi^2(n-1) \] と整理する。
STEP 05

母分散|手順3:カイ二乗分布の両端を棄却域にする

検定統計量が 自由度 \(n-1\) のカイ二乗分布にしたがう形まで整理できました。

ここでは、 有意水準を

\[ \alpha=0.05 \]

とします。

今回は両側検定なので、 左右に2.5%ずつの棄却域を設定します。

カイ二乗分布の両側5%を棄却域にする
2.5% 2.5%

これまで使ってきた 上側%点 の記法なら、 左側の境界は

\[ \chi^2_{0.975}(n-1) \]

右側の境界は

\[ \chi^2_{0.025}(n-1) \]

です。

\[ \chi^2 \le \chi^2_{0.975}(n-1) \] または \[ \chi^2 \ge \chi^2_{0.025}(n-1) \]

となれば、 検定統計量は棄却域に入っています。

手順3
カイ二乗分布は左右非対称なので、 左右それぞれの%点から棄却域を設定する。
STEP 06

母分散|検定統計量の実現値を計算して判定する

最後に、 実際の標本から求めた不偏分散を使って、 検定統計量の実現値を計算します。

\[ \chi^2_{\mathrm{obs}} = \frac{ (n-1)\hat\sigma^2 }{ \sigma_0^2 } \]
\(\chi^2_{\mathrm{obs}}\) は、実際の標本から計算した カイ二乗検定統計量の実現値 を表します。

この値が、 左右いずれかの棄却域に入るかを確認します。

棄却域に入る
→ \(H_0:\sigma^2=\sigma_0^2\) を棄却
棄却域に入らない
→ \(H_0\) を棄却しない
区間推定との違い
区間推定ではカイ二乗分布の中央部分から 母分散の信頼区間を求めました。
仮説検定では逆に、 外側の棄却域 に検定統計量が入るかを見ます。
STEP 07

母比率|手順0:帰無仮説を設定する

続いて、 母比率 \(p\) の仮説検定を見ていきます。

母比率についても、 まず帰無仮説で具体的な値を設定します。

帰無仮説
\[ H_0:p=p_0 \]
対立仮説
\[ H_1:p\neq p_0 \]

今回も両側検定を考えます。

前提
母比率の検定では、 中心極限定理による正規近似を使うため、 サンプルサイズが十分に大きい 場合を扱います。
手順0
帰無仮説のもとでは、 成功確率は具体的な値 \(p_0\) であると仮定する。
STEP 08

母比率|手順1:二項分布から標本比率の分布へ

サンプルサイズ \(n\) の標本について、 成功回数を \(X\) とします。

帰無仮説 \(H_0:p=p_0\) が正しいなら、

\[ X\sim\mathrm{Bin}(n,p_0) \]

です。

0・1の和が成功回数になる
1 0 1 0 1 1
↓ 0・1を足し合わせる
成功回数 \(X\)

そして、 標本比率は

\[ \hat p=\frac{X}{n} \]

です。

サンプルサイズが十分大きければ、 中心極限定理により、

\[ \hat p \approx N\left( p_0,\; \frac{p_0(1-p_0)}{n} \right) \]
手順1
帰無仮説のもとでは、 標本比率の平均も \(p_0\) になる。
STEP 09

母比率|手順2:標本比率を標準化する

手順1で、 標本比率 \(\hat p\) の近似分布を整理できました。

次は、 標準正規分布の付表が使えるように標準化します。

\[ Z = \frac{ \hat p-p_0 }{ \sqrt{ p_0(1-p_0)/n } } \approx N(0,1) \]

この \(Z\) が、 母比率の仮説検定で使う 検定統計量 です。

区間推定との違いに注目

母比率の区間推定では、 未知の \(p\) を \(\hat p\) で近似して \[ \sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}{n}} \] を使いました。

一方、仮説検定では 帰無仮説として \(p=p_0\) を仮定しているため、 \[ \sqrt{\frac{p_0(1-p_0)}{n}} \] を使います。
手順2
仮説検定では、 帰無仮説で定めた \(p_0\) を使って標準化する。
STEP 10

母比率|手順3:標準正規分布から棄却域を決める

検定統計量 \(Z\) が 標準正規分布にしたがう形まで整理できました。

今回も、 有意水準を

\[ \alpha=0.05 \]

とします。

対立仮説は

\[ H_1:p\neq p_0 \]

なので両側検定です。

左右2.5%ずつを棄却域にする
2.5% 2.5%
\[ |Z| \ge z_{0.025} \]
95%両側検定なら \[ |Z|\ge1.96 \]

実際の標本比率 \(\hat p\) を代入して、

\[ z_{\mathrm{obs}} = \frac{ \hat p-p_0 }{ \sqrt{ p_0(1-p_0)/n } } \]

を計算し、 この実現値が棄却域に入るかを確認します。

手順3
\(z_{\mathrm{obs}}\) が棄却域に入れば、 \(H_0:p=p_0\) を棄却する。
STEP 11

母分散と母比率の検定を並べて整理する

母分散の仮説検定
手順0 \[ H_0:\sigma^2=\sigma_0^2 \]
↓
手順1・2 \[ \chi^2 = \frac{(n-1)\hat\sigma^2}{\sigma_0^2} \sim\chi^2(n-1) \]
↓
手順3
カイ二乗分布の両端と比較
母比率の仮説検定
手順0 \[ H_0:p=p_0 \]
↓
手順1 \[ \hat p \approx N\left( p_0, \frac{p_0(1-p_0)}{n} \right) \]
↓
手順2 \[ Z = \frac{\hat p-p_0} {\sqrt{p_0(1-p_0)/n}} \]
↓
手順3
標準正規分布の棄却域と比較
共通していること
使う分布は違っても、
「仮説を立てる → 分布を整理する → 検定統計量をつくる → 棄却域と比較する」 という流れは同じ。
SUMMARY

母分散・母比率の仮説検定を整理する

手順0
母数について 具体的な帰無仮説 を設定する
手順1
帰無仮説のもとで 何がどんな分布にしたがうか を整理
手順2
付表が使える 検定統計量 に変換
手順3
有意水準から 棄却域 を決め、実現値と比較
母分散の検定
\[ H_0:\sigma^2=\sigma_0^2 \] \[ \chi^2 = \frac{ (n-1)\hat\sigma^2 }{ \sigma_0^2 } \sim \chi^2(n-1) \]
両側5%検定なら、 カイ二乗分布の左右2.5%ずつを棄却域にする。
母比率の検定
\[ H_0:p=p_0 \] \[ X\sim\mathrm{Bin}(n,p_0) \] \[ Z = \frac{ \hat p-p_0 }{ \sqrt{p_0(1-p_0)/n} } \approx N(0,1) \]
両側5%検定なら、 \(|Z|\ge1.96\) が棄却域。
区間推定との対応

母分散
→ カイ二乗分布

母比率
→ 大標本で正規近似

使う標本分布は区間推定と同じ。
仮説検定では、 帰無仮説で母数を具体的に固定し、その世界で観測値がどれだけ極端かを見る。
最後に
母平均・母分散・母比率で式は変わっても、 仮説検定の構造は共通。

だからこそ、 「何がどんな分布にしたがうか」 を理解しておくことが最も重要。
NEXT STEP

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