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仮説検定の構造
仮説検定の構造を確率分布の図で捉え、検定統計量の実現値から帰無仮説を棄却する仕組みと、第1種・第2種の過誤の意味を説明できるようになる。
仮説検定の構造を図で理解する
前のレクチャーでは、 仮説検定の考え方を言葉で整理しました。
今回はさらに一歩進んで、 仮説検定の構造を確率分布の図で確認 していきます。
まず押さえておきたいのが、 図の横軸です。
検定統計量とは、 帰無仮説を検定するために、標本から計算する統計量 です。
実は、 区間推定でも似た計算をしてきました。
↓
仮説検定では 検定統計量 として使われる
図の縦軸は確率密度です。 つまり、 検定統計量がどの値をとりやすいか を分布として表しています。
標本から計算した z や t などの値を使って、 帰無仮説を検定する。
帰無仮説 \(H_0\) と対立仮説 \(H_1\)
仮説検定で最初に考えるのは、 前のレクチャーでも確認した 帰無仮説 \(H_0\) です。
一方、 帰無仮説と対立する仮説を 対立仮説 \(H_1\) と呼びます。
対立仮説は英語で alternative hypothesis と呼ばれ、 帰無仮説に代わる仮説という位置づけです。
仮説検定では、 まず帰無仮説 \(H_0\) を定め、 その帰無仮説を棄却できるかどうか を検討します。
このレクチャーでは、 たとえば \[ H_0:\mu=0 \] \[ H_0:\mu=100 \] のように、 検定の基準となる値を具体的に定める場合を考えます。
対立仮説 \(H_1\) は、それと対立する世界を表す。
有意水準 \(\alpha\) と棄却域を決める
帰無仮説 \(H_0\) を定めたら、 次に考えるのが 有意水準 \(\alpha\) です。
有意水準は、 帰無仮説が正しいとした場合に 「これほど起こりにくければ、帰無仮説を疑おう」 と判断する基準となる確率です。
有意水準には、
そして、 この有意水準に対応する 検定統計量の境界値 を求めます。
この境界よりも 起こりにくい側を 棄却域 と呼びます。
一方、 境界よりも起こりやすい側は、 このレクチャーでは 棄却しない領域(受容域) と呼びます。
この境界は、 区間推定で使ってきた 上側%点と同じ考え方です。
標本から検定統計量の実現値を計算する
ここまでで、 帰無仮説と有意水準、 そして棄却域を設定できました。
次に、 実際に観測された標本データから 検定統計量 を計算します。
標本から実際に計算された 検定統計量の具体的な値を、 検定統計量の実現値 と呼びます。
あとは、 この実現値が 棄却域に入るかどうか を確認します。
→ 帰無仮説 \(H_0\) を棄却する
→ 帰無仮説 \(H_0\) を棄却しない
第1種の過誤|正しい \(H_0\) を棄却してしまう
ここで重要なのが、 仮説検定には 誤った判断をしてしまう可能性 があることです。
まず、 帰無仮説 \(H_0\) が 本当は正しいとします。
それでも、 確率 \(\alpha\) の領域に 偶然データが入ることはあります。
このとき、 本当は帰無仮説が正しいにもかかわらず、 実現値が棄却域に入ったために 誤って帰無仮説を棄却 してしまいます。
帰無仮説 \(H_0\) が本当は正しい
↓
それなのに \(H_0\) を棄却してしまう
その確率が \(\alpha\)
第2種の過誤|誤った \(H_0\) を棄却できない
反対方向の誤りもあります。
今度は、 帰無仮説 \(H_0\) が正しくなく、 対立仮説 \(H_1\) の世界が正しい と考えます。
ところが、 対立仮説の分布にも、 帰無仮説の棄却しない領域と重なる部分があります。
この \(\beta\) の領域に実現値が入ると、 本当は対立仮説の世界が正しいにもかかわらず、 帰無仮説を棄却できません。
帰無仮説 \(H_0\) は本当は正しくない
↓
それなのに \(H_0\) を棄却できない
その確率が \(\beta\)
「棄却されなかった」=「正しい」ではない
第2種の過誤を考えると、 仮説検定で非常に重要な注意点が見えてきます。
検定統計量の実現値が 棄却域に入らなかった場合、 帰無仮説は 棄却されません。
しかし、 だからといって
と考えることはできません。
なぜなら、 対立仮説が正しい世界でも、 確率 \(\beta\) で 棄却しない領域にデータが入る可能性があるからです。
→ 帰無仮説に対して反証する方向の証拠が得られた
→ 帰無仮説を棄却するだけの証拠が得られなかった
特に、 \(\beta\) は有意水準 \(\alpha\) のように 検定手続きの中で直接設定される値ではありません。
そのため、 帰無仮説が棄却されなかった場合には、 「帰無仮説が正しい」と強く主張しない ことが大切です。
仮説検定の構造を1枚で整理する
最後に、 ここまで見てきた要素を 1つの図にまとめます。
本当は \(H_0\) が正しいのに、 \(H_0\) を棄却してしまう。
本当は \(H_0\) が正しくないのに、 \(H_0\) を棄却できない。
仮説検定の構造を整理する
正しい \(H_0\) を棄却してしまう。
確率: \(\alpha\)
誤った \(H_0\) を棄却できない。
確率: \(\beta\)
帰無仮説が 棄却されなかった からといって、 帰無仮説が正しいことが証明されたわけではありません。
その判断には必ず \(\alpha\) と \(\beta\) という2種類の誤りの可能性がある。
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