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区間推定
点推定では母数を1つの値で推定しましたが、実際には標本からの推定には不確実さが残ります。このレクチャーでは、その不確実さをふまえて母数を区間で推定する区間推定の考え方を、3つのステップで整理します。
このページのゴール
区間推定の基本的な考え方を理解し、標本平均の分布を出発点として、標準化・付表・信頼係数の流れから母平均の信頼区間を導けるようになる。
STEP 01
区間推定とは何か
区間推定とは、
標本から計算される値を使って、
母数を1つの値ではなく区間で推定する方法です。
前のレクチャーで見た点推定では、
母数を1つの値で推定しました。
それに対して区間推定では、
「母数はこのあたりにありそうだ」と、
幅をもった区間で表します。
点推定
母平均を1つの値で推定
\[
\mu \approx 72.4
\]
区間推定
母平均を区間で推定
\[
68.1 \le \mu \le 76.7
\]
区間推定のイメージ
↓ 標本を抽出
標本平均 \(\bar{X}\) を計算
↓ 確率分布を利用
母平均 \(\mu\) を区間で推定する
ここがポイント
点推定は「1つの値」。
区間推定は「幅をもった区間」で母数を推定する。
STEP 02
区間推定は3つの手順で考える
区間推定にはさまざまな公式がありますが、
公式をそのまま暗記する必要はありません。
基本的には、
次の3つの手順で考えることができます。
手順1
どんな値がどんな確率分布にしたがうか
を整理する
今回は例として、
平均 \(\mu\)、分散 \(\sigma^2\) の正規母集団を考えます。
今回の設定
\[
X\sim N(\mu,\sigma^2)
\]
↓ 標本を抽出
\[
X_1,X_2,\ldots,X_n
\]
↓
標本平均 \(\bar{X}\) から
母平均 \(\mu\) の区間を推定する
ここがポイント
「分布を整理する → 付表が使える形にする → 区間をつくる」。
この3つの手順を軸に考える。
STEP 03
手順1:標本平均の分布を整理する
最初に確認するのは、
どんな値がどんな分布にしたがうのか
です。
今回は母集団が
\[
X\sim N(\mu,\sigma^2)
\]
という正規分布にしたがっています。
母集団
\(X\sim N(\mu,\sigma^2)\)
↓ 標本を \(n\) 個とる
\(X_1,X_2,\ldots,X_n\)
↓ 平均を計算
\[
\bar{X}
=
\frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n}
\]
標本平均の性質から、
\(\bar{X}\) は
\[
\bar{X}
\sim
N\left(
\mu,
\frac{\sigma^2}{n}
\right)
\]
となります。
分散
\(\sigma^2/n\)
\(n\) の分だけ小さくなる
ここがポイント
区間推定の手順1では、
推定に使う統計量がどんな分布にしたがうかを整理する。
STEP 04
手順2:付表が使える形にする
手順1では、
\[
\bar{X}
\sim
N\left(
\mu,
\frac{\sigma^2}{n}
\right)
\]
と整理しました。
次は、
標準正規分布の付表が使える形
に変換します。
標準化
\[
\bar{X}
\sim
N\left(
\mu,
\frac{\sigma^2}{n}
\right)
\]
↓
\[
Z
=
\frac{\bar{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}
\sim N(0,1)
\]
分母の
\(\sigma/\sqrt{n}\)
は、標本平均の標準偏差です。
標本平均の分散
\[
\frac{\sigma^2}{n}
\]
↓ 平方根
標本平均の標準偏差
\[
\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\]
これで \(Z\) が標準正規分布にしたがう形になったので、
標準正規分布の付表を使えるようになりました。
ここがポイント
手順2では、付表に対応する分布へ変換する。
今回は標準化して \(Z\sim N(0,1)\) にする。
STEP 05
手順3:まず中央95%を考える
\(Z\) が標準正規分布にしたがうことがわかったので、
ここから確率を使います。
例として、
中央にある
95%
の範囲を考えてみましょう。
確率全体は100%です。
中央を95%とすると、
残りは5%になります。
全体 100%
↓
中央を 95%
↓
残りは 5%
↓ 左右に半分ずつ
つまり、
中央95%の区間をつくるためには、
左右それぞれ2.5%になる境界
を探せばよいことになります。
ここがポイント
手順3では確率を使って区間の境界を決める。
中央95%を残すなら、
外側に残る5%を左右2.5%ずつに分ける。
STEP 06
\(z_{\alpha/2}\) とは何か
ここで、
区間推定で頻繁に登場する
\(z_{\alpha/2}\)
という記号を整理しておきましょう。
まず、
中央に残したい確率を
\(1-\alpha\)
と表します。
信頼係数
\(1-\alpha\)
↓ 95%なら
\[
1-\alpha=0.95
\]
↓
\[
\alpha=0.05
\]
↓ 左右に半分
\[
\frac{\alpha}{2}=0.025
\]
そして、
標準正規分布の右側に残る確率が \(\alpha/2\)
になる境界の \(Z\) の値を、
と表します。
\[
P\left(
Z\ge z_{\alpha/2}
\right)
=
\frac{\alpha}{2}
\]
これが
上側確率 \(\alpha/2\) 点
の意味です。
95%信頼区間なら、
右側に残る確率は2.5%なので、
標準正規分布表から境界値を探すと、
\[
z_{0.025}\approx1.96
\]
となります。
標準正規分布は左右対称なので、
左側の境界は
\(-1.96\)、
右側の境界は
\(1.96\)
です。
95%信頼区間なら
\[
\alpha=0.05
\]
\[
\frac{\alpha}{2}=0.025
\]
\[
z_{\alpha/2}
=
z_{0.025}
\approx1.96
\]
ここがポイント
\(z_{\alpha/2}\) は、
「その値より右側にある確率が \(\alpha/2\) となる境界値」。
STEP 07
\(Z\) の区間を \(\mu\) の区間へ変える
ここまでで、
\(Z\) が中央の
\(1-\alpha\)
の区間に入る条件を整理できました。
\[
P\left(
-z_{\alpha/2}
\le Z \le
z_{\alpha/2}
\right)
=
1-\alpha
\]
しかし、
知りたいのは \(Z\) ではなく、
母平均 \(\mu\)です。
そこで、
\[
Z
=
\frac{\bar{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}
\]
を代入し、
\(\mu\) が不等式の中央にくるように整理します。
\[
-z_{\alpha/2}
\le
Z
\le
z_{\alpha/2}
\]
↓ \(Z\) を代入
\[
-z_{\alpha/2}
\le
\frac{\bar{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}
\le
z_{\alpha/2}
\]
↓ \(\mu\) について整理
\[
\bar{X}
–
z_{\alpha/2}
\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\le
\mu
\le
\bar{X}
+
z_{\alpha/2}
\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\]
これが、
今回考えている母平均 \(\mu\) の
\(1-\alpha\) 信頼区間
です。
信頼区間の構造
中心
\(\bar{X}\)
±
\(z_{\alpha/2}\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\)
標本平均を中心に、左右へ幅をもたせる
信頼区間の「95%」について
同じ方法で標本抽出と区間作成を何度も繰り返したとき、
作られた区間の約95%が真の母平均 \(\mu\) を含む、
という意味です。
ここがポイント
\(Z\) の確率区間を作ったあと、
\(\mu\) が中央にくるよう式を整理すれば信頼区間が得られる。
STEP 08
区間推定の3つの手順をもう一度整理する
最後に、
今回の流れを1本につなげて確認しましょう。
手順1
どんな値がどんな分布にしたがう?
\[
\bar{X}
\sim
N\left(
\mu,
\frac{\sigma^2}{n}
\right)
\]
↓
手順2
付表が使える形へ
\[
Z
=
\frac{\bar{X}-\mu}{\sigma/\sqrt{n}}
\sim N(0,1)
\]
↓
手順3
確率から境界を決める
\[
-z_{\alpha/2}
\le
Z
\le
z_{\alpha/2}
\]
↓
\[
\bar{X}
–
z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\le
\mu
\le
\bar{X}
+
z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\]
区間推定の問題では、
まず手順1の
「どんな統計量が、どんな分布にしたがうのか」
を整理することが重要です。
そこがわかれば、
あとは対応する標本分布へ変換し、
付表から境界値を探して、
求めたい母数について整理していきます。
次のレクチャーでは、
実際に付表をどのように読めばよいのかを見ていきましょう。
最後に
区間推定は公式暗記ではなく3つの手順。
特に手順1の「どんな分布にしたがうか」を最初に整理する。
SUMMARY
区間推定を整理する
信頼係数
中央に残す確率
\(1-\alpha\)
95%信頼区間なら
信頼係数
\[
1-\alpha=0.95
\]
↓
\[
\alpha=0.05
\]
↓ 左右に半分
\[
\frac{\alpha}{2}=0.025
\]
↓
\[
z_{\alpha/2}
=
z_{0.025}
\approx1.96
\]
母平均の信頼区間
\[
\bar{X}
–
z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\le
\mu
\le
\bar{X}
+
z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt{n}}
\]
最後に
区間推定は「手順1 → 手順2 → 手順3」の流れで考える。
「95%」からいきなり公式を覚えるのではなく、
95% → 残り5% → 左右2.5% → 境界値 \(z_{\alpha/2}\)、
という順番で整理する。
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