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一元配置分散分析の概要

一元配置分散分析は、1つの質的変数が量的変数 \(y\) に与える影響を分析する方法です。このレクチャーでは、一元配置データ特有の記号を確認したうえで、賃貸住宅の家賃を例に、水準ごとの平均と平方和の分解を整理します。
このページのゴール

一元配置分散分析のデータ構造と、平方和の分解を理解する。

STEP 01

一元配置分散分析は「1つの質的変数」の影響を見る

このレクチャーでは、 一元配置分散分析 の全体像を確認します。

一元配置分散分析では、 1つの質的変数が、 被説明変数 \(y\) をどの程度説明できるかを考えます。

1つの質的変数
↓
量的変数 \(y\) の違いを
どれくらい説明できるか

そして、 質的変数がとるそれぞれの値を、 分散分析では 水準 と呼びます。

水準とは
質的変数の各カテゴリのこと。
STEP 02

まずは一元配置データの記号を確認する

一元配置分散分析では、 独特な添え字を使ってデータを表すことがあります。

まずは、 記号の意味を整理しておきましょう。

水準 データの大きさ 観測値 平均
\(A_1\) \(n_1\) \(y_{11},y_{12},\ldots,y_{1n_1}\) \(\bar y_{1\cdot}\)
\(A_2\) \(n_2\) \(y_{21},y_{22},\ldots,y_{2n_2}\) \(\bar y_{2\cdot}\)
⋮ ⋮ ⋮ ⋮
\(A_a\) \(n_a\) \(y_{a1},y_{a2},\ldots,y_{an_a}\) \(\bar y_{a\cdot}\)
全体平均 \(\bar y_{\cdot\cdot}\)

水準は \(A_1,A_2,\ldots,A_a\) と表し、 全部で \(a\) 個の水準があると考えます。

また、 水準 \(A_j\) に含まれるデータ数を \(n_j\) と表します。

注意

各水準のデータ数 \(n_1,n_2,\ldots,n_a\) は、 必ずしも同じである必要はありません。
STEP 03

\(y_{ji}\) の2つの添え字を読む

一元配置分散分析では、 各観測値を

\[ y_{ji} \]

と表します。

このレクチャーでは、 2つの添え字を次のように使います。

\(j\)

どの水準か
\(i\)

その水準の何番目のデータか
たとえば
\[ y_{23} \]
水準 \(A_2\) の
3番目の観測値
添え字の順番には流儀があります

このレクチャーでは、 \(j\) を水準番号、\(i\) を水準内のデータ番号 としています。

ただし、教科書によっては、 \(i\) を水準番号、\(j\) をデータ番号として 逆の順番で表すこともあります。

そのため、 問題文やテキストの冒頭で、 添え字が何を表しているかを確認するようにしましょう。
このレクチャーでは
\(j\) = 水準番号
\(i\) = その水準内のデータ番号
STEP 04

ドットは「その添え字を全部まとめる」イメージ

平均には、 ドット \(\cdot\) が入った記号が登場します。

\[ \bar y_{j\cdot} \]
水準 \(j\) は固定
\(i\) の部分を全部まとめる

水準 \(j\) の平均
\[ \bar y_{\cdot\cdot} \]
\(j\) も \(i\) も全部まとめる

全データの平均

たとえば、

\[ \bar y_{1\cdot} \] は 水準 \(A_1\) に含まれるすべての観測値の平均 です。
STEP 05

賃貸住宅の例に置き換えてみる

記号だけではイメージしづらいので、 賃貸住宅を例に考えてみましょう。

ここでは、 被説明変数 \(y\) を 家賃 とします。

そして、 家賃を説明する質的変数として 部屋の向き を考えます。

質的変数
部屋の向き
↓ 水準
東向き
西向き
南向き
北向き
この例では
「部屋の向き」が質的変数、
「東・西・南・北」がそれぞれの水準です。
STEP 06

記号と賃貸住宅の例を対応させる

記号 意味 賃貸住宅の例
\(A_j\) 水準 東・西・南・北
\(n_j\) 水準 \(j\) のデータ数 その向きの部屋数
\(y_{ji}\) 水準 \(j\) の \(i\) 番目の観測値 各部屋の家賃
\(\bar y_{j\cdot}\) 水準 \(j\) の平均 その向きの平均家賃
\(\bar y_{\cdot\cdot}\) 全体平均 全部屋の平均家賃

ここまで対応関係を整理できれば、 一元配置分散分析のデータ構造がかなり見やすくなります。

STEP 07

一元配置分散分析では「ばらつき」を分解する

ここからが、 一元配置分散分析の中心です。

まず、 各部屋の家賃 \(y_{ji}\) は、 全体平均 \(\bar y_{\cdot\cdot}\) からずれています。

\[ y_{ji}-\bar y_{\cdot\cdot} \]

この 全体平均からのズレ を、 2つのズレに分けて考えます。

全体平均との差 \[ y_{ji}-\bar y_{\cdot\cdot} \]
=
水準平均と全体平均との差 \[ \bar y_{j\cdot}-\bar y_{\cdot\cdot} \]
+
観測値と水準平均との差 \[ y_{ji}-\bar y_{j\cdot} \]
\[ y_{ji}-\bar y_{\cdot\cdot} = (\bar y_{j\cdot}-\bar y_{\cdot\cdot}) + (y_{ji}-\bar y_{j\cdot}) \]

この分解が、 このあと平方和を分解する考え方のもとになります。

STEP 08

総平方和 \(S_T\):もともとの \(y\) 全体のばらつき

まず、 すべての観測値について 全体平均からのズレを二乗して足したものが、 総平方和 です。

\[ S_T = \sum_{j=1}^{a} \sum_{i=1}^{n_j} (y_{ji}-\bar y_{\cdot\cdot})^2 \]
総平方和 \(S_T\)

家賃 \(y\) 全体が、
全体平均家賃からどれくらいばらついているか
STEP 09

水準間平方和 \(S_A\):水準によって説明できるばらつき

次に、 各水準の平均と 全体平均の差に注目します。

\[ S_A = \sum_{j=1}^{a} n_j (\bar y_{j\cdot}-\bar y_{\cdot\cdot})^2 \]

各水準の平均が 全体平均から大きく離れているほど、 \(S_A\) は大きくなります。

水準間平方和 \(S_A\)

水準の違いによって
どれくらい \(y\) の違いを説明できるか

賃貸住宅の例なら、 部屋の向きによって平均家賃がどれくらい違うか を表す平方和です。

STEP 10

水準内平方和 \(S_e\):水準では説明できなかったばらつき

同じ水準の中でも、 個々の観測値は 水準平均と完全には一致しません。

その水準内に残ったばらつきを表すのが、 水準内平方和 です。

\[ S_e = \sum_{j=1}^{a} \sum_{i=1}^{n_j} (y_{ji}-\bar y_{j\cdot})^2 \]
水準内平方和 \(S_e\)

同じ水準の中に残っているばらつき
= 水準では説明できなかったばらつき

回帰分析でいう 残差平方和 に対応するイメージです。

STEP 11

総平方和は「水準間+水準内」に分解できる

ここまでの3つの平方和をまとめると、

\[ S_T = S_A + S_e \]
全体のばらつき \[ S_T \]
=
水準で説明できたばらつき \[ S_A \]
+
水準では説明できなかったばらつき \[ S_e \]

したがって、 一元配置分散分析では、 \(S_A\) が大きいほど、 水準の違いによって \(y\) を説明できている と考えます。

一元配置分散分析の中心
全体のばらつきを、 「水準で説明できる部分」と 「説明できずに残った部分」に分ける。
STEP 12

一元配置分散分析のモデルを確認する

最後に、 一元配置分散分析が前提としているモデルを確認します。

\[ y_{ji} = \mu + \alpha_j + \varepsilon_{ji} \]

それぞれの項の意味は、

\(\mu\)
一般平均
\(\alpha_j\)
水準 \(j\) の効果
\(\varepsilon_{ji}\)
モデルで説明できずに残る誤差
一般平均 \[ \mu \]
+
水準による効果 \[ \alpha_j \]
+
誤差 \[ \varepsilon_{ji} \]
↓
観測値 \(y_{ji}\)
STEP 13

誤差には正規性・独立性・共通の分散を仮定する

一元配置分散分析では、 モデルの誤差 \(\varepsilon_{ji}\) について、

\[ \varepsilon_{ji} \sim N(0,\sigma^2) \]

と考えます。

平均は0
誤差が一方向に偏らない
正規分布にしたがう
誤差の確率分布を正規分布として考える
共通の分散 \(\sigma^2\)
どの水準でも誤差のばらつきは同じと考える
互いに独立
ある観測値の誤差が、別の観測値の誤差に影響しない

この誤差の仮定を土台として、 次のレクチャーでは、 水準による効果が本当に認められるかを 仮説検定していきます。

次のレクチャーへ
平方和の分解と誤差の確率モデルをもとに、 一元配置分散分析のF検定へ進みます。
SUMMARY

一元配置分散分析の全体像を整理する

水準
質的変数がとる各カテゴリ。
賃貸住宅の例なら、 東向き・西向き・南向き・北向き。
平方和の分解
\[ S_T = S_A + S_e \]
全体のばらつき = 水準で説明できるばらつき + 水準内に残るばらつき
一元配置モデル
\[ y_{ji} = \mu+\alpha_j+\varepsilon_{ji} \]
観測値は、 一般平均+水準効果+誤差 として考えます。
特に重要な3点
① 水準は質的変数のカテゴリを表す
② 全体のばらつきは、水準間と水準内に分解できる
③ 一元配置モデルでは、誤差に正規性・独立性・共通分散を仮定する
最後に
一元配置分散分析の中心は、

「\(y\) 全体のばらつきのうち、 水準の違いによってどれだけ説明できるか」

を考えることです。
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