スマホで統計学

17

期待値と分散

確率変数にはさまざまな値があり、それぞれに異なる起こりやすさが対応しています。では、その分布の「中心」や「ばらつき」はどのように表せばよいのでしょうか。このレクチャーでは、確率を重みとして考える「期待値」と、中心からのばらつきを表す「分散」を、離散型・連続型の両方について図と数式から理解します。
このページのゴール

期待値を「確率を重みとした加重平均」、分散を「平均からの二乗偏差の期待値」として理解し、重要な公式 \(V[X]=E[X^2]-(E[X])^2\) の意味を説明できるようになる

STEP 01

期待値は確率分布の中心

確率変数 \(X\) は、 さまざまな値をとります。

その確率分布について、 平均的な中心の位置を表すものが 期待値です。

\[ E[X]=\mu \]
\(E[X]\) は確率変数 \(X\) の期待値を表します。

この期待値は、 母集団の平均である 母平均 \(\mu\) に対応します。

母集団や母平均については、 推測統計で詳しく学びます。 ここではまず、 「確率分布全体を平均したときの中心」 というイメージを持っておきましょう。

期待値のイメージ
確率分布がある

値ごとの起こりやすさも考える

分布全体の中心を求める

期待値 \(E[X]\)
ここでいう「中心」は、 必ずしも真ん中の値最も起こりやすい値を意味するわけではありません。 次のSTEPで具体例を見ていきます。
ここがポイント
期待値 \(E[X]\) は、 確率分布全体を平均したときの中心を表す
STEP 02

確率を重みにして中心を求める

では、 期待値をどのように計算するのか、 具体例で見てみましょう。

0と1の2つの値をとる確率変数を考えます。

\(X=0\) となる確率が0.8、 \(X=1\) となる確率が0.2だとします。

0と1をとる確率変数
0.8
0
0.2
1

もし0と1という 値だけを見て単純平均すれば、

\[ \frac{0+1}{2}=0.5 \]

となります。

しかし、 この分布では0の確率が0.8と大きく、 1の確率は0.2しかありません。

そのため、 分布の中心は0.5ではなく、 起こりやすい0の方向へ寄る はずです。

中心が0の方向へ移動する
0
0.2
0.5
1
期待値
単純な真ん中

そこで、 各値にその値が生じる確率を掛けて、 加重平均します。

\(0\times0.8\)

\(1\times0.2\)

\(E[X]=0.2\)

これが、 確率を重みとする加重平均です。

離散型の期待値
\[ E[X] = \sum_i x_i f(x_i) \]
期待値は、実際にとる値とは限りません。
この確率変数は0か1しかとりませんが、 期待値は0.2です。 0.2は「実際に出る値」ではなく、 分布全体を重み付きで平均した位置です。
ここがポイント
起こりやすい値ほど強く反映して平均する。
それが期待値
STEP 03

連続型の期待値を理解する

連続型の確率変数でも、 期待値の考え方は同じです。

確率変数の値に、 その場所の確率密度を重みとして掛け、 分布全体について平均します。

連続型でも「重み付きの中心」を考える
E[X]

離散型では、 1つ1つの値を \(\Sigma\) で足し合わせました。

連続型では値が無数にあるため、 積分を使って分布全体を集めます。

連続型の期待値
\[ E[X] = \int_{-\infty}^{\infty} x f(x)\,dx \]
確率変数の値 \(x\)
×
その場所の確率密度 \(f(x)\)

分布全体で積分

期待値 \(E[X]\)

\(\Sigma\) と積分で見た目は違いますが、 値を、その起こりやすさで重み付けして平均する という考え方は共通です。

ここがポイント
離散型は \(\Sigma\)、連続型は積分。
どちらも「分布を重みとした平均」を求めている
STEP 04

分散は偏差の二乗の期待値

次に、 確率変数のばらつきを考えます。

確率変数の分散は \(V[X]\) と表し、 母分散 \(\sigma^2\) に対応します。

\[ V[X]=\sigma^2 \]

分散の考え方は、 記述統計で学んだ分散と同じです。

まず、 中心である母平均 \(\mu\) から どれくらい離れているかを考えます。

平均からのずれを見る
\(\mu\)
\(X\)
\(X-\mu\)

この \(X-\mu\) が、平均との差である偏差です。

ただし偏差にはプラスとマイナスがあるため、 そのまま平均すると互いに打ち消し合ってしまいます。

そこで、 偏差を二乗します。

\[ (X-\mu)^2 \]

そして、 この偏差の二乗について期待値を求めたものが 分散です。

分散
\[ V[X] = E[(X-\mu)^2] \]
平均からの偏差

二乗する

その期待値を求める

分散
ここがポイント
分散 = 「平均からの偏差の二乗」の期待値
STEP 05

分散の重要公式を理解する

離散型の分散では、 偏差の二乗に その値が生じる確率を掛けて、 すべて足し合わせます。

離散型の分散
\[ V[X] = \sum_i (x_i-\mu)^2 f(x_i) \]

つまり分散も、 偏差の二乗を確率で重み付けして平均したもの です。

そして、この式を整理すると、 非常に重要な公式になります。

必ず覚えておきたい公式
\[ V[X] = E[X^2]-(E[X])^2 \]

ここで間違えやすいのが、 「二乗の期待値」と「期待値の二乗」 の違いです。

二乗の期待値
\(E[X^2]\)
先に \(X\) を二乗してから期待値
期待値の二乗
\((E[X])^2\)
先に期待値を求めてから二乗

STEP02で使った、 0と1をとる確率変数で実際に計算してみましょう。

同じ例で分散まで計算する
まず \(E[X^2]\)
\[ E[X^2] = 0^2\times0.8 + 1^2\times0.2 = 0.2 \]
次に \((E[X])^2\)
\[ (E[X])^2 = (0.2)^2 = 0.04 \]
分散
\[ V[X] = 0.2-0.04 = 0.16 \]

このように具体的に計算すると、

二乗の期待値

\(E[X^2]\)

期待値の二乗

\((E[X])^2\)
覚え方:
分散は 「二乗の期待値 − 期待値の二乗」 と覚えておくと、 順番を間違えにくくなります。
なぜこの公式になる?
\[ V[X] = E[(X-\mu)^2] \]
\[ = E[X^2-2\mu X+\mu^2] \]
\[ = E[X^2]-2\mu E[X]+\mu^2 \]

ここで \(E[X]=\mu\) なので、

\[ V[X] = E[X^2]-\mu^2 = E[X^2]-(E[X])^2 \]
ここがポイント
\[ V[X]=E[X^2]-(E[X])^2 \] 「二乗の期待値 − 期待値の二乗」と覚える
STEP 06

連続型の分散を整理する

連続型でも、 分散の考え方は離散型と同じです。

母平均 \(\mu\) からの偏差を二乗し、 そこに確率密度 \(f(x)\) を重みとして掛けます。

そして連続型なので、 \(\Sigma\) ではなく積分で分布全体を集めます。

連続型の分散
\[ V[X] = \int_{-\infty}^{\infty} (x-\mu)^2f(x)\,dx \]
偏差の二乗
\((x-\mu)^2\)

確率密度 \(f(x)\) で重み付け

分布全体で積分

分散

式は少し複雑に見えますが、 やっていることは離散型と同じです。

離散型
偏差の二乗 × 確率を \(\Sigma\) で足す
連続型
偏差の二乗 × 確率密度を積分する

そして連続型でも、 式を整理した結果は離散型と共通です。

離散型・連続型に共通
\[ V[X] = E[X^2]-(E[X])^2 \]

つまり、 離散型と連続型では計算方法が違っても、 期待値と分散が表している意味は同じ です。

ここがポイント
離散型は \(\Sigma\)、連続型は積分。
しかし期待値と分散の考え方は共通
SUMMARY

期待値と分散を整理する

期待値
確率を重みとした 分布の中心
分散
平均からの 偏差の二乗の期待値
離散型
各値を \(\Sigma\) で足し合わせる
連続型
分布全体を 積分する
期待値
確率変数の値
×
その値の起こりやすさ

分布全体の中心
分散
平均からの偏差

二乗する

その期待値を求める
分散の重要公式
\[ V[X] = E[X^2]-(E[X])^2 \]
二乗の期待値 − 期待値の二乗
順番をセットで覚えておきましょう。
最後に
期待値は「中心」、分散は「ばらつき」。
どちらも確率分布を重みとして考える
NEXT STEP

次のステップ:統計検定®2級を目指す

このサイトで統計学の基礎を学んだあと、 統計検定®2級の合格まで体系的に学びたい方へ。

統計検定®2級対策講座【ベストセラー版】

約9時間の動画講義と200問以上の小テストに加えて、 模擬試験にも取り組めます。 講座内ではQ&Aも利用でき、 これまでに400問以上の質問に回答してきました。

約9時間の動画講義
200問以上の小テスト
模擬試験
400問以上のQ&A
統計検定®2級対策講座を見る
資格試験ではなく、統計学そのものを動画で学びたい方へ

記述統計・確率・推定・検定を基礎から学ぶ 「統計学ベーシック講座その1『確率分布・推定・検定』」 も用意しています。

統計学ベーシック講座を見る →