スマホで統計学

12

事象と確率

確率を学ぶ最初の一歩は、「何が起こるのか」を事象として整理することです。このレクチャーでは、サイコロを例に、試行・事象・全事象を理解し、「または」「かつ」の確率をどのように計算するのかを図から考えます。
このページのゴール

試行・事象・全事象の意味を理解し、ベン図を使って和事象・積事象と確率の加法定理を説明できるようになる

STEP 01

試行と事象を理解する

確率統計では、 試行事象という考え方が土台になります。

試行とは、 結果が偶然に左右される実験や観測のことです。

たとえば、 「サイコロを1回振る」という行為が1つの試行です。

試行
サイコロを1回振る
起こりうる結果
1
2
3
4
5
6

このような起こりうる結果をまとめたものを 事象として考えます。

たとえば、 「3以下の目が出る」という事象を \(A\) とすれば、

\[ A=\{1,2,3\} \]
「3以下」という1つの事象の中に、 1・2・3という結果が含まれています。

また、 「2が出る」のように1つだけの結果からなる事象は、 根元事象と呼ばれます。

試行 サイコロを1回振る
根元事象 「2が出る」など、1つの結果からなる事象
事象 「3以下」など、結果をまとめた集合
ここがポイント
試行によって起こりうる結果を、 集合としてまとめたものが事象
STEP 02

全事象と空事象を図で見る

1回のサイコロ投げで起こりうる結果は、 1から6までのすべての目です。

この起こりうるすべての結果を集めたものを 全事象と呼びます。

全事象は標本空間とも呼ばれ、 \(\Omega\) という記号で表します。

\[ \Omega = \{1,2,3,4,5,6\} \]

ここで、

\[ A=\{1,2,3\} \] \[ B=\{2,4,6\} \]
\(A\):3以下の目が出る
\(B\):偶数の目が出る

とすると、次のようなベン図で表すことができます。

1 2 3 4 6 5
\(\Omega=\{1,2,3,4,5,6\}\)
\(A\):3以下
\(B\):偶数
「2」は \(A\) にも \(B\) にも含まれています。

また、 結果を1つも含まない事象を 空事象と呼びます。

\(\varnothing\)
何も結果を含まない事象
ここがポイント
全事象 \(\Omega\) は起こりうるすべての結果、
空事象 \(\varnothing\) は何も結果を含まない事象
STEP 03

確率の基本ルールを理解する

事象を使って、 その起こりやすさを数値で表したものが確率です。

事象 \(A\) が起こる確率は、 \(P(A)\) と表します。

① 確率は0以上1以下
\[ 0\le P(A)\le1 \]
確率0は「起こらない」、 確率1は「必ず起こる」ことに対応します。
② 全事象の確率は1
\[ P(\Omega)=1 \]
サイコロなら、 1から6のどれかの目は必ず出るので、 全事象の確率は1です。
③ 重ならない事象なら、そのまま足せる
\[ P(A\cup B) = P(A)+P(B) \]
ただし、この式をそのまま使えるのは、 \(A\) と \(B\) が互いに排反な場合です。

「互いに排反」とは、 2つの事象がまったく重ならないことです。

\(A\)
\(B\)
重なりがない = 互いに排反
ここがポイント
互いに排反なら、 「AまたはB」の確率はそのまま足し算できる
STEP 04

「または」と「かつ」を理解する

確率では、 複数の事象を組み合わせて考えることがあります。

特に重要なのが、 「または」「かつ」です。

AまたはB = 和事象
\(A\cup B\)
A B
Aに入るか、Bに入るか、その両方に入る結果
AかつB = 積事象
\(A\cap B\)
A B
AにもBにも入っている重なりの部分

サイコロの例では、

\[ A=\{1,2,3\} \] \[ B=\{2,4,6\} \]

なので、 AにもBにも入るのは「2」だけです。

\[ A\cap B=\{2\} \]
ここがポイント
\(A\cup B\) = AまたはB
\(A\cap B\) = AかつB
STEP 05

重なりがあるときの確率を考える

AとBが互いに排反なら、 それぞれの確率をそのまま足すことができました。

では、 AとBに重なりがある場合はどうでしょうか。

AとBをそのまま足すと…
\(A=\{1,2,3\}\)
\(B=\{2,4,6\}\)
1, 2, 3, 2, 4, 6
「2」を2回数えてしまう

そこで、 一度重複して数えた \(A\cap B\) の部分を 1回だけ引きます。

\[ P(A\cup B) = P(A) + P(B) – P(A\cap B) \]
AとBを足して、 二重に数えた重なりを1回引きます。
Aを数える

Bを数える

重なりを1回戻す

これが、 重なりのある事象にも使える 確率の加法定理です。

ここがポイント
重なりがある場合は、 二重に数えた \(A\cap B\) を1回引く
STEP 06

サイコロで加法定理を計算する

最後に、 これまで使ってきたサイコロの例で 実際に計算してみましょう。

事象 A:3以下
\[ A=\{1,2,3\} \] \[ P(A)=\frac{3}{6} \]
事象 B:偶数
\[ B=\{2,4,6\} \] \[ P(B)=\frac{3}{6} \]
AかつB
\[ A\cap B=\{2\} \] \[ P(A\cap B)=\frac{1}{6} \]

これを加法定理に代入します。

\[ P(A\cup B) = P(A)+P(B)-P(A\cap B) \] \[ = \frac36 + \frac36 – \frac16 \] \[ = \frac56 \]
集合で見ても同じ
1
2
3
4
5
6
AまたはBに入るのは 1・2・3・4・6の5個です。
3個 + 3個 − 重複1個
= 5個
ここがポイント
\[ P(A\cup B) = \frac56 \] 「または」の確率は、 重なりを二重に数えないようにする
SUMMARY

事象と確率を整理する

試行
結果が偶然に左右される実験や観測
事象
起こりうる結果の集合
全事象
起こりうるすべての結果 \(\Omega\)
和事象
\(A\cup B\) = AまたはB
積事象
\(A\cap B\) = AかつB
\[ P(A\cup B) = P(A) + P(B) – P(A\cap B) \]
重なりがなければ \(P(A\cap B)=0\) なので、 \(P(A)+P(B)\) だけになります。
試行

起こりうる結果を事象として整理

事象の起こりやすさを確率で表す
最後に
「または」と「かつ」を集合で理解すると、
この先の条件付き確率も理解しやすくなる
NEXT STEP

次のステップ:統計検定®2級を目指す

このサイトで統計学の基礎を学んだあと、 統計検定®2級の合格まで体系的に学びたい方へ。

統計検定®2級対策講座【ベストセラー版】

約9時間の動画講義と200問以上の小テストに加えて、 模擬試験にも取り組めます。 講座内ではQ&Aも利用でき、 これまでに400問以上の質問に回答してきました。

約9時間の動画講義
200問以上の小テスト
模擬試験
400問以上のQ&A
統計検定®2級対策講座を見る
資格試験ではなく、統計学そのものを動画で学びたい方へ

記述統計・確率・推定・検定を基礎から学ぶ 「統計学ベーシック講座その1『確率分布・推定・検定』」 も用意しています。

統計学ベーシック講座を見る →