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2つの確率変数の計算
ここでは、2つの確率変数 \(X,Y\) を同時に考えます。和や差の期待値・分散はどのように計算するのか。そして、2つの変数の関係を表す共分散・相関係数とは何か。特に、分散の計算に共分散が現れる理由を整理していきます。
このページのゴール
2つの確率変数の和・差について期待値と分散を計算し、共分散・相関係数・独立性の関係を説明できるようになる
STEP 01
2つの確率変数をイメージする
ここでは、
2つの確率変数 \(X,Y\)
を同時に考えます。
たとえば、
次の2つの確率変数があるとします。
今回考えるのは、
この2つから作った
\(X+Y\) や \(X-Y\) です。
↓
\(X+Y\) や \(X-Y\)
の期待値・分散を考える
ここで重要なのが、
それぞれの性質だけでなく、
2つがどのように関係しているか
も見ることです。
それぞれを見る
期待値・分散
2つの関係を見る
共分散・相関係数・独立性
ここがポイント
2つの確率変数では、
「それぞれ」と「2つの関係」の両方を見る
STEP 02
和と差の期待値を計算する
まずは、
2つの確率変数の
期待値です。
期待値は、
分布の
中心
と考えることができます。
そこで、
\(X\) と \(Y\) の中心を
足し合わせるイメージで考えてみましょう。
数式では、
\[
E[X+Y]
=
E[X]+E[Y]
\]
なので、
\[
E[X+Y]
=
0+1
=
1
\]
となります。
差の場合も同じです。
\[
E[X-Y]
=
E[X]-E[Y]
=
-1
\]
期待値では、
\(X\) と \(Y\) が独立かどうかを
気にする必要はありません。
中心を足せば、中心も足される
中心を引けば、中心も引かれる
一般にはどう表す?
期待値には
線形性があります。
\[
E[aX+bY]
=
aE[X]+bE[Y]
\]
この性質には、
\(X\) と \(Y\) の独立性は必要ありません。
ここがポイント
期待値は「分布の中心」
\(E[X\pm Y]=E[X]\pm E[Y]\)
STEP 03
和と差の分散を計算する
次は、
分散です。
期待値とは違い、
分散では
\(X\) と \(Y\) の
一緒に動く度合い
が効いてきます。
\(X\uparrow\)
\(Y\uparrow\)
足す
↓
動きが重なる
↓
ばらつきが大きくなる
\(X\uparrow\)
\(Y\uparrow\)
引く
↓
動きが打ち消される
↓
ばらつきが小さくなる
この
「一緒に動く度合い」
を表すのが、
共分散です。
\[
V[X+Y]
=
V[X]+V[Y]
+2\operatorname{Cov}(X,Y)
\]
\[
V[X-Y]
=
V[X]+V[Y]
-2\operatorname{Cov}(X,Y)
\]
数字を入れて、
この意味を確認してみましょう。
STEP01では、
\[
V[X]=1,\qquad V[Y]=4
\]
でした。
まず、
たとえば
\[
\operatorname{Cov}(X,Y)=1
\]
とします。
\(\operatorname{Cov}(X,Y)=1\) のとき
共分散が正のとき、
\(X\) と \(Y\) は同じ方向に動きやすいため、
和ではばらつきが大きくなり、
差ではばらつきが小さくなります。
一方、
共分散が0なら、
\(\operatorname{Cov}(X,Y)=0\) のとき
この場合は、
共分散の項がなくなるので、
\[
V[X+Y]=1+4=5
\]
\[
V[X-Y]=1+4=5
\]
となります。
つまり、
\(X\) と \(Y\) それぞれの分散が同じでも、
共分散の値によって、
和や差のばらつきは変わる
ということです。
差でも \(V[X]-V[Y]\) にはなりません
\(Y\) の符号を反転させても、
\(Y\) 自身のばらつきの大きさは変わらないため、
\(V[Y]\) は足されます
和の分散の公式を導出する
\[
V[X+Y]
=
E[
\{(X-E[X])+(Y-E[Y])\}^2
]
\]
二乗を展開すると、
それぞれが分散と共分散なので、
\[
V[X+Y]
=
V[X]+V[Y]
+2\operatorname{Cov}(X,Y)
\]
一般の \(aX+bY\) では?
\(X-Y\) の場合は、
\(a=1,\;b=-1\) です。
\[
(-1)^2V[Y]=V[Y]
\]
そのため、
\(V[Y]\) はプラスのままです。
一方で、
共分散の項には \(2ab\) があるので、
\(b=-1\) とすると符号がマイナスになります。
ここがポイント
分散では、
それぞれのばらつきだけでなく
「一緒に動く度合い」も考える
STEP 04
共分散を理解する
STEP03で登場した
共分散を、
もう少し詳しく見ていきましょう。
共分散は、
記述統計でも一度登場しました。
記述統計での共分散
実際のデータについて、
「xの偏差 × yの偏差」を平均したもの
↓
確率変数での共分散
確率変数について、
「Xの偏差 × Yの偏差」の期待値をとる
見た目は少し変わりましたが、
考え方は記述統計の共分散と同じです。
\(X-\mu_X\) は
\(X\) の平均からの偏差、
\(Y-\mu_Y\) は
\(Y\) の平均からの偏差です。
そして重要なのが、
2つの偏差の
符号の組み合わせです。
4象限で見る「偏差の積」の符号
−
\(X-\mu_X\)(−)
×
\(Y-\mu_Y\)(+)
共分散をマイナスへ
+
\(X-\mu_X\)(+)
×
\(Y-\mu_Y\)(+)
共分散をプラスへ
+
\(X-\mu_X\)(−)
×
\(Y-\mu_Y\)(−)
共分散をプラスへ
−
\(X-\mu_X\)(+)
×
\(Y-\mu_Y\)(−)
共分散をマイナスへ
2つの偏差の符号が同じなら積はプラス、
符号が異なれば積はマイナスになります。
つまり、
\(X\) と \(Y\) が平均から
同じ方向にずれることが多ければ、
共分散は正になりやすくなります。
反対に、
一方が平均より大きいときに
もう一方が平均より小さくなることが多ければ、
共分散は負になりやすくなります。
また、
プラスとマイナスの偏差の積が
全体として打ち消し合えば、
共分散は0に近づきます。
同じ方向のずれが優勢 → 共分散は正
反対方向のずれが優勢 → 共分散は負
全体として打ち消し合う → 共分散は0付近
共分散には、
計算でよく使うもう1つの公式があります。
なぜ \(\operatorname{Cov}(X,Y)=E[XY]-E[X]E[Y]\) になる?
共分散の定義から始めます。
\[
\operatorname{Cov}(X,Y)
=
E[(X-\mu_X)(Y-\mu_Y)]
\]
カッコの中を展開すると、
期待値の線形性を使うと、
\(E[X]=\mu_X,\;E[Y]=\mu_Y\) なので、
\[
\operatorname{Cov}(X,Y)
=
E[XY]-E[X]E[Y]
\]
\(X\) と \(X\) 自身の共分散は?
\(Y\) を \(X\) に置き換えると、
\[
\operatorname{Cov}(X,X)
=
E[(X-\mu_X)^2]
\]
これは分散の定義そのものなので、
\[
\operatorname{Cov}(X,X)
=
V[X]
\]
となります。
ここがポイント
記述統計でも確率変数でも考え方は同じ
共分散は「2つの偏差の積」を平均したもの
STEP 05
相関係数を理解する
共分散は、
2つの確率変数が
一緒に動く方向を表します。
ただし、
共分散の大きさは
変数の単位や尺度
の影響を受けます。
共分散
単位や尺度の影響を受ける
↓
\(X\) の標準偏差で割る
\(Y\) の標準偏差で割る
↓
相関係数
\[
\rho_{XY}
=
\frac{
\operatorname{Cov}(X,Y)
}{
\sigma_X\sigma_Y
}
\]
標準化することで、
相関係数は
\(-1\) から \(1\) の範囲に収まります。
つまり、
相関係数は
共分散を共通のモノサシに乗せたもの
と考えるとよいでしょう。
\[
\operatorname{Cov}(X,Y)=0
\Longleftrightarrow
\rho_{XY}=0
\]
相関係数が0の状態を
無相関
といいます。
相関係数0は「何の関係もない」という意味ではありません
表しているのは、
線形的な相関がないということです
ここがポイント
相関係数は、
共分散を標準化して
\(-1\)〜\(1\) のモノサシにしたもの
STEP 06
独立な確率変数を整理する
最後に、
2つの確率変数の
独立性
を整理します。
\(X\) と \(Y\) が独立なら、
積の期待値について
\[
E[XY]=E[X]E[Y]
\]
が成り立ちます。
ここから、
独立と共分散・相関係数の関係を
一続きで見ることができます。
独立
↓
\(E[XY]=E[X]E[Y]\)
↓
\(\operatorname{Cov}(X,Y)=0\)
↓
無相関
矢印は一方向です
独立
\(\Rightarrow\)
無相関
無相関
\(\not\Rightarrow\)
独立
そして、
共分散が0になるので、
STEP03の分散の公式も簡単になります。
独立
↓
\(\operatorname{Cov}(X,Y)=0\)
↓
\(V[X+Y]=V[X]+V[Y]\)
\(V[X-Y]=V[X]+V[Y]\)
STEP01の例なら、
\[
V[X]=1,\qquad V[Y]=4
\]
なので、
\(X\) と \(Y\) が独立なら
\[
V[X+Y]=1+4=5
\]
\[
V[X-Y]=1+4=5
\]
「共分散を考えない」のではなく
「共分散が0だから消えている」
問題文に
「互いに独立」と書かれているときも、
目には見えない
共分散0
が入っていると考えると整理しやすくなります。
ここがポイント
独立なら共分散0
だから和でも差でも分散をそのまま足せる
SUMMARY
2つの確率変数の計算を整理する
独立
独立なら\(\operatorname{Cov}(X,Y)=0\)
重要公式
\[
E[X\pm Y]
=
E[X]\pm E[Y]
\]
\[
V[X\pm Y]
=
V[X]+V[Y]
\pm2\operatorname{Cov}(X,Y)
\]
\[
\operatorname{Cov}(X,Y)
=
E[XY]-E[X]E[Y]
\]
独立 ⇒ 無相関 は成り立ちますが、
無相関 ⇒ 独立 は一般には成り立ちません
最後に
期待値は「中心」を足し引きする
分散では「一緒に動く度合い」を忘れない
NEXT STEP
次のステップ:統計検定®2級を目指す
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