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モーメント

期待値や分散は、確率分布の中心やばらつきを表す重要な指標でした。実はこれらは「モーメント」という、より大きな考え方の一部として整理できます。このレクチャーでは、確率変数の1乗・2乗・3乗・4乗へと視点を広げながら、平均・分散・歪度・尖度がどのようにつながっているのかを理解します。
このページのゴール

モーメントと中心モーメントの意味を理解し、1次・2次・3次・4次の中心モーメントが、平均・分散・歪度・尖度とどのようにつながるのか説明できるようになる

STEP 01

モーメントとは何か

前のレクチャーでは、 確率変数の期待値分散を学びました。

ここでは、その考え方をさらに広げた モーメントを見ていきます。

モーメントでは、 確率変数 \(X\) を1乗、2乗、3乗……したものについて、 その期待値を考えます。

\(k\) 次のモーメント
\[ \mu’_k=E[X^k] \]
\(k\) の値を変える
\(X\)

\(X^2\)

\(X^3\)

\(X^4\)

それぞれの期待値を考える

つまりモーメントは、 確率分布のさまざまな特徴を、べき乗と期待値によって捉える考え方 です。

ここがポイント
\(k\) 次のモーメントは、 \(X^k\) の期待値 \(E[X^k]\)
STEP 02

1次のモーメントは平均

まず、 \(k=1\) の場合を考えてみましょう。

\[ \mu’_1 = E[X^1] = E[X] \]

\(X^1\) は \(X\) そのものなので、 これは前のレクチャーで学んだ 期待値です。

1次のモーメント
\(E[X]\)

確率分布の平均

つまり、 モーメントという新しい言葉が出てきても、 まったく別のものを学んでいるわけではありません。

期待値そのものが、1次のモーメント です。

ここがポイント
1次のモーメント \(E[X]\) は、 期待値=平均を表す
STEP 03

中心モーメントを理解する

モーメントにはもう一つ、 中心モーメントがあります。

通常のモーメントでは \(X\) をそのまま使いますが、 中心モーメントでは 平均 \(\mu\) からの偏差 \(X-\mu\) を使います。

基準を変える
通常のモーメント
\(X^k\)
0を基準に見る
↓ 平均 \(\mu\) を引く
中心モーメント
\((X-\mu)^k\)
平均を基準に見る

平均 \(\mu\) を引くということは、 分布の中心を0に移してから考える ということです。

\(k\) 次の中心モーメント
\[ \mu_k = E[(X-\mu)^k] \]

次数ごとに何を表すのか見てみましょう。

1次の中心モーメント \[ \mu_1=E[X-\mu]=0 \]
平均からの偏差を平均すれば0
2次の中心モーメント \[ \mu_2 = E[(X-\mu)^2] = V[X] \]
これは分散
3次の中心モーメント \[ \mu_3=E[(X-\mu)^3] \]
歪度につながる
4次の中心モーメント \[ \mu_4=E[(X-\mu)^4] \]
尖度につながる
ここがポイント
中心モーメントでは、 平均を引いて「中心を0に移してから」分布の特徴を見る
STEP 04

3次の中心モーメントから歪度を見る

3次の中心モーメントは、

\[ \mu_3 = E[(X-\mu)^3] \]

分布が 左右のどちらに歪んでいるか を捉えるもとになります。

3乗では、 左側の負の偏差は負のまま、 右側の正の偏差は正のままです。

平均より左
\((X-\mu)^3<0\)
平均より右
\((X-\mu)^3>0\)

さらに3乗することで、 平均から遠く離れた値ほど強く影響 します。

そのため、 左右どちらの裾が長く伸びているのかが、 3次の中心モーメントに反映されます。

歪度
\[ \frac{\mu_3}{\sigma^3} \]
歪度 < 0
左側の裾が長い
歪度 = 0
左右対称な分布では歪度は0
歪度 > 0
右側の裾が長い
向きを間違えないポイント:
山が寄っている方向ではなく、 長く伸びている裾の方向を見ると分かりやすくなります。
ここがポイント
左に裾が長い → 歪度は負
左右対称な分布 → 歪度は0
右に裾が長い → 歪度は正
STEP 05

4次の中心モーメントから尖度を見る

次は、 4次の中心モーメントです。

\[ \mu_4 = E[(X-\mu)^4] \]

4乗すると符号はすべて正になり、 さらに 平均から遠く離れた値が非常に強く反映 されます。

平均からの距離が2倍

4乗すると \(2^4=16\) 倍

遠い値の影響が急激に大きくなる

この4次の中心モーメントを、 分散の大きさで標準化したものが 尖度です。

尖度
\[ \frac{\mu_4}{\sigma^4} \]

この定義では、 正規分布の尖度は 3です。

「尖度」という名前から、 山の頂点の尖り具合だけを見る指標に思えるかもしれません。

しかし、4乗を使っていることから分かるように、 特に重要なのは 平均から遠い値や、分布の裾の影響 です。

正規分布を基準にして裾を見る
破線:正規分布 実線:裾の影響が大きい分布

正規分布よりも、 平均から遠い部分に確率が残りやすい分布では、 4次の偏差が大きくなりやすく、 尖度も大きくなる傾向があります。

尖度は「尖り」だけで判断しない
4次の中心モーメントを使うため、 平均から遠い値や裾の特徴を強く反映する指標 と考える方が理解しやすくなります。

なお、 正規分布の値を0にするため、 3を引いた 超過尖度を使うこともあります。

超過尖度
\[ \frac{\mu_4}{\sigma^4}-3 \]

この定義なら、 正規分布の超過尖度は0です。 問題では、どちらの定義を使っているのか確認しましょう。

ここがポイント
尖度は4次の中心モーメントがベース。
平均から遠い値や裾の影響を強く受ける
STEP 06

次数によって何が見えるのか

最後に、 中心モーメントの次数を上げると 何が変わるのかを整理しておきましょう。

2乗
\((X-\mu)^2\)
符号が消える

中心からどれくらい離れているかを見る

分散
3乗
\((X-\mu)^3\)
符号が残る + 遠い値を強調

左右どちらの裾が強いかを見る

歪度
4乗
\((X-\mu)^4\)
符号が消える + 遠い値をさらに強調

裾や遠い値の影響を見る

尖度

このように考えると、 3次や4次という数字にも意味があります。

モーメントのつながり
1次のモーメント
→ 平均

2次の中心モーメント
→ 分散

3次の中心モーメント
→ 歪度のもと

4次の中心モーメント
→ 尖度のもと

モーメントという言葉だけを見ると難しく感じますが、 平均や分散も含めて、 確率分布の特徴を次数ごとに捉えている と考えると整理しやすくなります。

ここがポイント
何乗するかによって、 分布の「中心・ばらつき・左右の歪み・裾」の違いが見えてくる
SUMMARY

モーメントを整理する

モーメント
\(X^k\) の期待値
中心モーメント
\((X-\mu)^k\) の期待値
歪度
3次の中心モーメントから 左右の歪みを見る
尖度
4次の中心モーメントから 裾や遠い値の影響を見る
\(k\) 次のモーメント
\[ \mu’_k=E[X^k] \]
\(k\) 次の中心モーメント
\[ \mu_k=E[(X-\mu)^k] \]
1次のモーメント
\(E[X]\) → 平均
1次の中心モーメント
\(E[X-\mu]=0\)
2次の中心モーメント
分散
3次の中心モーメント
歪度のもと
4次の中心モーメント
尖度のもと
次数が上がると
2乗 → ばらつき
3乗 → 左右の歪み
4乗 → 裾・遠い値の影響
最後に
モーメントは、 確率分布の特徴を「何乗するか」によって捉えていく考え方
NEXT STEP

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