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標本平均の期待値と分散
標本平均にも確率分布があることを理解し、その期待値が \(\mu\)、分散が \(\sigma^2/n\) になる理由を、図と数式の両方から説明できるようになる。
標本平均とは何か
母集団から取り出したデータの一部を、 標本またはサンプルといいます。
ここでは、\(X_1,X_2,\ldots,X_n\) という \(n\) 個の確率変数が、 次の条件を満たしているとします。
この \(n\) 個のデータをすべて足して、\(n\) で割ったものを 標本平均といいます。
ここで重要なのは、 元の確率分布が正規分布であるとは仮定していない ことです。
これから確認する標本平均の期待値と分散の性質は、 正規分布だけに限った話ではありません。
標本平均にも「分布」がある
ここで、1つ疑問が出てきます。
標本平均は、手元のデータを平均して得られる1つの値です。 それなのに、なぜ標本平均の「期待値」や「分散」を考えるのでしょうか。
ポイントは、 標本を取り直せば、得られる標本平均も変わる ことです。
確率分布ができる
標本を取り直すたびに、得られる \(\bar{X}\) は少しずつ変わります。 したがって、\(\bar{X}\) 自体も確率変数として考えることができます。
標本平均はどのくらいばらつくのか?
これを表すのが、標本平均の期待値と分散です。
標本平均の中心は変わらない
まず、標本平均の分布の中心を考えます。
\(X_1,X_2,\ldots,X_n\) はすべて、 平均 \(\mu\) の同じ確率分布にしたがっています。
数式でも確認してみましょう。
\[ E[\bar{X}] = E\left[ \frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n} \right] \]\(n\) は定数なので、\(1/n\) を期待値の外に出すことができます。
\[ = \frac{1}{n} E[X_1+X_2+\cdots+X_n] \]期待値には加法性があるため、
\[ = \frac{1}{n} \left( E[X_1]+E[X_2]+\cdots+E[X_n] \right) \]それぞれの期待値は \(\mu\) なので、
\[ = \frac{\mu+\mu+\cdots+\mu}{n} = \frac{n\mu}{n} = \mu \]つまり、標本抽出を何度も繰り返して標本平均を計算すると、 その標本平均たちの中心は、もとの分布の平均 \(\mu\) と一致します。
標本平均のばらつきは小さくなる
次に、標本平均がどのくらいばらつくのかを考えます。
ここで重要になるのが、 \(X_1,X_2,\ldots,X_n\) が互いに独立だという条件です。
ここで使っているのは 「独立なら共分散は0」 という性質です。 共分散が0だからといって、一般に独立とは限りません。
では、標本平均の分散を計算してみましょう。
\[ V[\bar{X}] = V\left[ \frac{X_1+X_2+\cdots+X_n}{n} \right] \]分散では、定数倍を外に出すとき、その定数は2乗になります。
\[ V[aX]=a^2V[X] \]したがって、
\[ V[\bar{X}] = \frac{1}{n^2} V[X_1+X_2+\cdots+X_n] \]\(X_1,\ldots,X_n\) は互いに独立なので、 異なる確率変数どうしの共分散は0です。
そのため、和の分散はそれぞれの分散を足すだけで求められます。
それぞれの分散は \(\sigma^2\) なので、
\[ \sigma^2+\sigma^2+\cdots+\sigma^2 = n\sigma^2 \]よって、
\[ V[\bar{X}] = \frac{n\sigma^2}{n^2} = \frac{\sigma^2}{n} \]元の確率分布の分散は \(\sigma^2\) でした。 一方、標本平均の分散は \(\sigma^2/n\) です。
\(n\) を増やすと何が起こる?
ここまでの結果を並べると、標本平均の性質はとてもシンプルです。
さらに、\(n\) を大きくするほど標本平均の分散は小さくなっていきます。
つまり、標本数を増やして平均をとるほど、 標本平均は \(\mu\) のまわりに集まりやすくなります。
上の図では、もとの分布と標本平均の分布を模式的に重ねています。 どちらも中心は \(\mu\) ですが、標本平均の方が広がりが小さくなっています。
ここで本当に重要なのは、
\[ E[\bar{X}]=\mu \]と
\[ V[\bar{X}] = \frac{\sigma^2}{n} \]という2つの性質です。
標本平均の分散は \[ \frac{\sigma^2}{n} \] ですが、標準偏差は \[ \frac{\sigma}{\sqrt{n}} \] です。 分布の横方向の広がりを考えるときには、 この標準偏差を見ると理解しやすくなります。
この性質は、このあと学ぶ区間推定や仮説検定の土台になります。
標本平均の期待値と分散を整理する
\(n\) を増やすほど、ばらつきは小さくなる。
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