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ダミー変数と多重共線性

重回帰分析では、量的変数だけでなく、部屋の向きのような質的変数を扱うこともあります。また、説明変数どうしに強い関係があると、偏回帰係数の推定が不安定になることがあります。このレクチャーでは、質的変数を重回帰分析に取り込むためのダミー変数と、多重共線性について整理します。
このページのゴール

ダミー変数の考え方と、多重共線性が問題になる理由を理解する。

STEP 01

重回帰分析の2つの補足論点

このレクチャーでは、 重回帰分析について 2つの補足的な論点を見ていきます。

① ダミー変数
部屋の向きのような 質的変数を、重回帰式で扱える形に変換する方法
② 多重共線性
説明変数どうしの関係が強すぎると、 偏回帰係数の推定が不安定になる問題
今回の2テーマ
「質的変数をどう入れるか」と 「説明変数どうしが似すぎると何が起こるか」を整理します。
STEP 02

質的変数はそのままでは重回帰式に入れにくい

これまでの重回帰分析では、 部屋の広さや駅徒歩のような 量的変数 を説明変数として使ってきました。

しかし、 実際のデータには、 数値そのものでは表しにくい 質的変数 もあります。

たとえば「部屋の向き」
南
東
西
北

この「南・東・西・北」という文字のままでは、 通常の重回帰式の説明変数として そのまま扱うことはできません。

そこで、 0と1の数値に置き換える工夫をします。

STEP 03

質的変数を複数のダミー変数に分解する

質的変数を重回帰分析で扱うときは、 まず1つの質的変数を、 複数の0・1変数に分解する と考えるとわかりやすいです。

質的変数「部屋の向き」
南・東・西・北
↓
南ダミー
東ダミー
西ダミー

それぞれのダミー変数について、 そのカテゴリに該当すれば1、 該当しなければ0を入れます。

部屋 向き 南 東 西
A 南 1 0 0
B 西 0 0 1
C 東 0 1 0
D 北 0 0 0

このように、 質的変数を0と1で表現した変数を ダミー変数 と呼びます。

ダミー変数
1つの質的変数を、 重回帰式で扱える複数の0・1変数に分解したもの。
STEP 04

ダミー変数はカテゴリ数より1つ少なく作る

ここで重要なのが、 元のカテゴリは

南・東・西・北
4種類

あるのに、 ダミー変数は

南・東・西
3個

しか作っていないことです。

南 = 0
東 = 0
西 = 0
↓
それだけで「北」だとわかる

つまり、 北というダミー変数まで作ると、 すでに他の3変数からわかる情報を 重複して持たせることになります。

基本ルール

定数項を含む通常の重回帰モデルでは、 カテゴリ数を \(k\) とすると、 ダミー変数は \(k-1\) 個 用意します。
STEP 05

作らなかったカテゴリが「基準」になる

今回は、 南・東・西のダミー変数を作り、 北のダミー変数を作りませんでした。

このとき、 北が 基準カテゴリ になります。

\[ \hat y = \hat\beta_0 + \hat\beta_{\mathrm{南}}D_{\mathrm{南}} + \hat\beta_{\mathrm{東}}D_{\mathrm{東}} + \hat\beta_{\mathrm{西}}D_{\mathrm{西}} \]

北向きの場合には、 3つのダミー変数がすべて0になります。

\[ D_{\mathrm{南}} = D_{\mathrm{東}} = D_{\mathrm{西}} = 0 \]

したがって、 北向きの場合の予測値は、

\[ \hat y = \hat\beta_0 \]

となります。

定数項との関係

基準カテゴリでは、 すべてのダミー変数が0になるため、 予測値の基準部分は 定数項 \(\hat\beta_0\) になります。

そのため、 他のカテゴリの偏回帰係数は、 この基準カテゴリとの差として解釈できます。
基準カテゴリ
ダミー変数を作らなかったカテゴリでは、 すべてのダミー変数が0になる。

そのため、 そのカテゴリが他のカテゴリを比較する基準になります。
STEP 06

ダミー変数の偏回帰係数は「基準との差」を表す

では、 ダミー変数にかかる偏回帰係数の意味を確認しましょう。

たとえば、 南向きダミーにかかる偏回帰係数を

\[ \hat\beta_{\mathrm{南}} \]

とします。

基準カテゴリである北向きの場合には、 すべてのダミー変数が0なので、

\[ \hat y_{\mathrm{北}} = \hat\beta_0 \]

です。

一方、 南向きの場合には、

\[ D_{\mathrm{南}}=1 \]

となるので、

\[ \hat y_{\mathrm{南}} = \hat\beta_0 + \hat\beta_{\mathrm{南}} \]

となります。

したがって、 南向きと北向きの予測値の差をとると、

\[ \hat y_{\mathrm{南}} – \hat y_{\mathrm{北}} = \hat\beta_{\mathrm{南}} \]

となります。

基準:北向き \[ \hat y_{\mathrm{北}} = \hat\beta_0 \]
+ \(\hat\beta_{\mathrm{南}}\)
南向き \[ \hat y_{\mathrm{南}} = \hat\beta_0+\hat\beta_{\mathrm{南}} \]
偏回帰係数の意味
\(\hat\beta_{\mathrm{南}}\) は、 他の説明変数を固定したときに、 南向きの部屋が 基準の北向きの部屋と比べて \(y\) がどれだけ異なるかを表します。
STEP 07

次に、多重共線性を考える

ここからは、 重回帰分析でもう1つ重要な論点である 多重共線性 を見ていきます。

多重共線性

説明変数どうしに非常に強い関係があるために、 それぞれの偏回帰係数を 安定して推定しにくくなる問題。

たとえば、 家賃を説明する変数として

部屋の広さ \(x_1\)

駅徒歩 \(x_2\)

があるとします。

この2つに非常に強い関係があると、 「家賃への効果がどちらの変数によるものなのか」 を切り分けにくくなります。

STEP 08

説明変数どうしがほぼ同じ情報を持つと困る

多重共線性の本質は、 複数の説明変数が ほとんど同じ情報を持ってしまう ことです。

たとえば、

\[ x_2 \approx 2x_1 \]

という非常に強い関係があったとします。

\(x_1\) の値がわかる
↓
\(x_2\) もほぼ決まる
↓
\(x_1\) と \(x_2\) の 個別の効果を切り分けにくい
多重共線性のイメージ
説明変数どうしが似た情報を持ちすぎると、 どちらの変数にどれだけ効果を割り振るべきかが わかりにくくなります。
STEP 09

その結果、偏回帰係数の推定が不安定になる

重回帰式では、 各説明変数の効果を 偏回帰係数として分けて表します。

\[ \hat y = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_1 + \hat\beta_2x_2 \]

しかし、 \(x_1\) と \(x_2\) がほとんど同じ情報を持っていると、

\(x_1\) の効果を大きめにする
↕
\(x_2\) の効果を大きめにする
↓
どちらでも似た予測値を作れてしまう

そのため、 標本が少し変わっただけでも、 偏回帰係数の値が大きく変動することがあります。

問題になること
予測値そのものが大きく変わらなくても、 個々の偏回帰係数は大きく変動することがあります。
STEP 10

係数が大きく変わっても、似た予測を作れてしまう

多重共線性によって 偏回帰係数が不安定になるイメージを、 数式で確認してみましょう。

たとえば、 重回帰式が

\[ \hat y = 1 + 2x_1 – 10x_2 \]

と推定されていたとします。

さらに、 2つの説明変数に

\[ x_2 \approx 2x_1 \]

という非常に強い関係があるとします。

このとき、 元の式の説明変数部分は、

\[ 2x_1-10x_2 \]

ですが、 \(x_2\approx2x_1\) を使えば、

\[ 2x_1-10x_2 \approx 2x_1-20x_1 = -18x_1 \]

とみなすことができます。

2つの係数の表現を比べる
\[ 2x_1-10x_2 \]
\(\approx\)
\[ -18x_1+0x_2 \]

係数を見れば、

\(x_1\) の係数:2 → −18
\(x_2\) の係数:−10 → 0

と大きく変わっています。

それでも、 \(x_1\) と \(x_2\) がほぼ同じ情報を持っているため、 予測値はほとんど同じ になってしまいます。

係数は大きく違う
でも
予測値はほとんど変わらない
↓
どの係数の組み合わせが正しいか決めにくい

これが、 多重共線性によって 偏回帰係数の推定が不安定になるイメージです。

注意

これは、 「偏回帰係数を自由に好きな値へ変えてよい」 という意味ではありません。

説明変数どうしがほぼ線形な関係をもつことで、 大きく異なる係数の組み合わせでも、 データに対して似た予測値を作れてしまう ということです。
多重共線性の本質
説明変数どうしが似すぎていると、 予測への寄与を個々の説明変数へ 安定して割り振ることが難しくなります。
STEP 11

説明変数どうしの強い関係に注意する

多重共線性を疑う典型的な状況は、 説明変数どうしに 非常に強い相関 がある場合です。

説明変数どうしに強い関係
↓
個別の効果を切り分けにくい
↓
偏回帰係数の推定が不安定になる

したがって、 説明変数間の相関係数が非常に大きい場合には、 多重共線性を疑う必要があります。

補足

説明変数が3個以上ある場合には、 単純な2変数間の相関係数だけでは 多重共線性を十分に把握できないこともあります。

実務では、 VIFなどの指標を確認することもあります。
SUMMARY

ダミー変数と多重共線性を整理する

ダミー変数
質的変数を、 0と1の数値に変換して 重回帰式に組み込みます。

定数項を含む通常の重回帰モデルでは、 カテゴリ数が \(k\) 個なら ダミー変数は \(k-1\) 個。

作らなかったカテゴリが 基準カテゴリ になります。
多重共線性
説明変数どうしの関係が非常に強いと、 個々の説明変数の効果を切り分けにくくなります。

その結果、 偏回帰係数の推定が不安定 になることがあります。
特に重要な4点
① 質的変数はダミー変数に変換する
② ダミー変数は基本的にカテゴリ数−1個
③ 偏回帰係数は基準カテゴリとの差を表す
④ 説明変数どうしの関係が強すぎると、多重共線性が問題になる
最後に
重回帰分析では、 「どんな変数をどう入れるか」だけでなく、 「説明変数どうしがどんな関係にあるか」 にも注意する必要があります。
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