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ベイズの定理

条件付き確率を使うと、「ある結果が起きた」という情報をもとに、その原因についての確率を考えることができます。このレクチャーでは、3つの工場と故障品の例を使って、事前確率が結果の観測によって事後確率へ更新される仕組みを、図と表から理解します。
このページのゴール

ベイズの定理を「結果を観測したあとで原因の確率を更新する仕組み」として理解し、事前確率・事後確率の意味を説明できるようになる

STEP 01

ベイズの定理は「結果から原因」を考える

前のレクチャーでは、 条件付き確率を学びました。

ベイズの定理は、その条件付き確率を使って、 ある結果が起きたあとで、その原因についての確率を考える ための定理です。

ここでは、3つの工場 \(B_1\)、\(B_2\)、\(B_3\) のいずれかで製造された製品を考えます。

そして、製品が 故障した という結果を事象 \(A\) とします。

まず分かっていること
原因
工場 \(B_1\)
工場 \(B_2\)
工場 \(B_3\)
結果
故障 \(A\)

通常は、 「\(B_1\) 工場で作られたとき、故障する確率」 のように、 原因から結果を考えます。

原因から結果
\(B_1\)

\(A\)
\(P(A\mid B_1)\)

ベイズの定理で知りたいのは、その逆です。

結果を見たあとで原因を考える
\(A\)

\(B_1\) ?
\(P(B_1\mid A)\)
ここがポイント
ベイズの定理では 「結果が分かったあとで、原因の確率を考える」
STEP 02

30個の製品で状況を整理する

具体例で考えていきましょう。

全体で30個の製品があり、 3つの工場 \(B_1\)、\(B_2\)、\(B_3\) で それぞれ10個ずつ製造されているとします。

\[ P(B_1) = P(B_2) = P(B_3) = \frac13 \]

また、各工場で作られた製品が故障する確率を、 次のように仮定します。

工場 \(B_1\)
\[ P(A\mid B_1) = \frac{1}{10} \]
10個のうち1個が故障
工場 \(B_2\)
\[ P(A\mid B_2) = \frac{3}{10} \]
10個のうち3個が故障
工場 \(B_3\)
\[ P(A\mid B_3) = \frac{2}{10} \]
10個のうち2個が故障

この状況を、 30個の製品そのもので見てみましょう。

\(B_1\):10個
● 故障:1個
\(B_2\):10個
● 故障:3個
\(B_3\):10個
● 故障:2個
全30個のうち、故障した製品は 1+3+2=6個
ここがポイント
各工場は10個ずつ製造し、 故障品は \(B_1\) に1個、\(B_2\) に3個、\(B_3\) に2個
STEP 03

故障した6個だけの世界を見る

では、 実際に故障した製品が1個見つかったとします。

この製品がどの工場で作られたものなのか、 という確率を考えたいわけです。

「故障した」という条件が分かっているので、 前の条件付き確率と同じように、 故障した製品だけの世界に絞ります。

故障した6個だけを見る
B1
B2
B2
B2
B3
B3
\(B_1\)
1個
\(B_2\)
3個
\(B_3\)
2個

故障した6個のうち、 \(B_1\) 工場で製造されたものは1個です。

\[ P(B_1\mid A) = \frac16 \]
故障したという条件のもとで、 \(B_1\) 工場で作られていた確率です。

つまり、この例では公式を知らなくても、 故障した6個だけを見れば答えが分かる ことになります。

ここは少し混乱しやすいところです。
STEP 04〜06で式・事前確率と事後確率・表での整理を順番に確認すると、 ベイズの定理のイメージがつかみやすくなります。
ここがポイント
「故障した」という結果が分かったら、 故障した製品だけの世界に絞って原因を見る
STEP 04

ベイズの定理の式を読む

ここまでの考え方を、 ベイズの定理の式で確認します。

まず条件付き確率は、

\[ P(B_1\mid A) = \frac{P(A\cap B_1)}{P(A)} \]

ここで分子の \(P(A\cap B_1)\) に乗法定理を使うと、

\[ P(A\cap B_1) = P(B_1)P(A\mid B_1) \]

したがって、 次のベイズの定理が得られます。

\[ P(B_1\mid A) = \frac{ P(B_1)P(A\mid B_1) }{ P(A) } \]

一見すると複雑ですが、 それぞれが何を表しているかを見ると理解しやすくなります。

\(P(B_1)\)
まだ故障したかどうかを見る前の、 \(B_1\) 工場で作られている確率
\(P(A\mid B_1)\)
\(B_1\) 工場で作られたという条件のもとで、 故障する確率
\(P(A)\)
工場に関係なく、 全体で故障する確率
\(P(B_1\mid A)\)
故障したという結果が分かったあとで、 \(B_1\) 工場で作られていた確率

今回の例では、

\[ P(B_1)=\frac13 \] \[ P(A\mid B_1)=\frac1{10} \] \[ P(A)=\frac6{30} \]

したがって、

\[ P(B_1\mid A) = \frac{ \frac13\times\frac1{10} }{ \frac6{30} } \] \[ = \frac{ \frac1{30} }{ \frac6{30} } = \frac16 \]
\(B_1\) で作られる
×
\(B_1\) で作られたとき故障する

\(B_1\) かつ故障
ここがポイント
ベイズの定理は 「結果が起きたあとで原因の確率を求める」式
STEP 05

事前確率から事後確率へ更新する

ベイズの定理では、 事前確率事後確率 という言葉が重要です。

今回の例では、 故障したという情報を得る前には、 3つの工場から同じ数だけ製造されています。

故障という結果を見る前
事前確率
\[ P(B_1)=\frac13 \]
「この製品は故障している」という情報を得る
故障という結果を見たあと
事後確率
\[ P(B_1\mid A)=\frac16 \]

結果を見る前には \(B_1\) の確率は \(\frac13\) でした。

ところが、 「故障した」という新しい情報 を得ると、 \(B_1\) の確率は \(\frac16\) に変わります。

ベイズの考え方
もともとの確率

新しい情報を得る

確率を更新する

このように、 新しい情報を使って確率を更新することが、 ベイズの定理の重要な考え方です。

ここがポイント
事前確率 = 結果を見る前の確率
事後確率 = 結果を見たあとに更新された確率
STEP 06

表を使ってベイズの定理を確認する

ベイズの定理で混乱したときは、 具体的な個数を表に整理すると分かりやすくなります。

今回の30個の製品を表にすると、 次のようになります。

\(B_1\)
\(B_2\)
\(B_3\)
故障 \(A\)
1
3
2
6
故障なし
9
7
8
24
10
10
10
30

この表を見ると、 条件付き確率の向きの違いも分かります。

\(P(A\mid B_1)\)

「\(B_1\) 工場で作られた」という条件なので、 \(B_1\) の列だけを見ます。

\[ P(A\mid B_1) = \frac{1}{10} \]
一方で
\(P(B_1\mid A)\)

「故障した」という条件なので、 故障 \(A\) の行だけを見ます。

\[ P(B_1\mid A) = \frac16 \]

同じ左上の「1」を使っていますが、 条件が違えば分母となる世界も変わります。

\(B_1\) が条件
\(1 \div 10 = \frac1{10}\)
\(A\) が条件
\(1 \div 6 = \frac16\)

ベイズの定理の式を理解したうえで、 このような表に整理できると、 実際の問題でもかなり扱いやすくなります。

ここがポイント
条件付き確率で迷ったら、 「どの行・どの列が条件なのか」を確認する
SUMMARY

ベイズの定理を整理する

ベイズの定理
結果から原因の確率を考える
事前確率
結果を見るの原因の確率
事後確率
結果を見たあとに更新された確率
条件
条件によって分母となる世界が変わる
ベイズの定理
\[ P(B_1\mid A) = \frac{ P(B_1)P(A\mid B_1) }{ P(A) } \]
ベイズの考え方
原因についての確率をもつ

結果を観測する

原因の確率を更新する
最後に
ベイズの定理 =
新しい情報を使って、 原因についての確率を更新する仕組み
NEXT STEP

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