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標本分布②
\(t\) 分布と \(F\) 分布が、どのような確率変数の組み合わせから生まれるのかを理解し、それぞれの形・自由度・推測統計での役割をイメージできるようになる。
\(Z\) とカイ二乗分布から \(t\) をつくる
まずは \(t\) 分布から見ていきましょう。
前のレクチャーでは、 標準正規分布にしたがう \(Z\) と、 自由度 \(m\) のカイ二乗分布にしたがう \(W\) を確認しました。
この \(Z\) と \(W\) が互いに独立であるとき、 次のような比を考えます。
この \(t\) が、 自由度 \(m\) の \(t\) 分布にしたがいます。
\[ t\sim t(m) \]つまり \(t\) 分布は、 前のレクチャーで登場した 標準正規分布とカイ二乗分布を組み合わせてつくられる分布 です。
なぜ \(t\) は \(Z\) に似ている?
\(t\) 分布は、標準正規分布によく似た形をしています。
その理由を理解するために、 \(t\) の分母にある
\[ \sqrt{\frac{W}{m}} \]に注目してみましょう。
カイ二乗分布では、
\[ E[W]=m \]なので、
\[ E\left[\frac{W}{m}\right]=1 \]となります。
さらに、自由度 \(m\) が大きくなるほど、 \(W/m\) は1の近くに安定しやすくなります。
つまり、自由度が大きくなるほど、
\[ t= \frac{Z}{\sqrt{W/m}} \]の分母が1に近づき、 \(t\) は \(Z\) に近い値をとるようになります。
\(t\) 分布は標準正規分布より裾が厚い
自由度が小さい \(t\) 分布は、 標準正規分布とよく似ていますが、まったく同じではありません。
自由度3の \(t\) 分布では、 標準正規分布よりも山が低く、 左右の裾が厚くなっています。
\(t\) 分布の方が山が低い
\(t\) 分布の方が裾が厚い
つまり \(t\) 分布では、 標準正規分布よりも 0から離れた値が現れやすい ということです。
\(t\) 分布の期待値は、\(m>1\) のとき
\[ E[t]=0 \]分散は、\(m>2\) のとき
\[ V[t]=\frac{m}{m-2} \]となります。
たとえば自由度3なら、
\[ V[t]=\frac{3}{3-2}=3 \]です。 標準正規分布の分散1よりも大きく、 裾が厚くなることとも対応しています。
平均平方和を比べると \(F\) 分布になる
最後に、\(F\) 分布を見ていきましょう。
前のレクチャーで、 カイ二乗分布にしたがう \(W\) は、 標準正規分布にしたがう値の二乗和でした。
\(F\) 分布では、 この平均平方和を2つ用意して、その比を考えます。
\(W_1\) と \(W_2\) が互いに独立で、
\[ W_1\sim\chi^2(m_1), \qquad W_2\sim\chi^2(m_2) \]とすると、
この \(F\) が、
\[ F\sim F(m_1,m_2) \]という \(F\) 分布にしたがいます。
\(F(m_1,m_2)\) では、 最初が分子の自由度、 次が分母の自由度です。
\(F=1\) を基準にばらつきを比べる
\(F\) 分布は、カイ二乗分布と同じく 0以上の値だけをとります。
\(F\) は「ばらつきの大きさの比」なので、 2つのばらつきに大きな違いがなければ、 比は1付近の値をとりやすい と考えることができます。
一方、分子側のばらつきが分母側よりかなり大きければ、 \(F\) も大きな値になります。
2つのばらつきに大きな違いがない
分子側のばらつきが相対的に大きい
\(F\) 分布は、0から始まり、右側に長い裾をもつ分布です。
実際に計算された \(F\) が1よりかなり大きければ、 「2つのばらつきは本当に同じと考えてよいのか?」 という疑問につながります。
比は1付近のはず
この考え方は、後の仮説検定で重要になります。
\(t\) 分布と \(F\) 分布を整理する
\(t\) 分布では1つの自由度、 \(F\) 分布では分子・分母の2つの自由度が 分布の形を決めます。
\(F\) 分布は「2つのばらつきを比べる」分布。
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