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付表の見方

区間推定や仮説検定では、標準正規分布・t分布・カイ二乗分布・F分布の確率や境界値を付表から読み取ります。このレクチャーでは、4つの付表について「表側・表頭・表の中身が何を表しているか」を図と具体例で整理します。
このページのゴール

4種類の付表の構造を区別し、自由度や上側確率から必要な確率・パーセント点を正しく読み取れるようになる。

STEP 01

付表は4種類ある

区間推定や仮説検定では、 確率分布の確率境界となる値を調べるために、 付表を使います。

この講座で使う付表は、 次の4種類です。

標準正規分布表
\(Z\sim N(0,1)\)
t分布表
\(t\sim t(\nu)\)
カイ二乗分布表
\(\chi^2\sim\chi^2(\nu)\)
F分布表
\(F\sim F(\nu_1,\nu_2)\)

ただし、 4つの表はすべて同じ読み方ではありません。

最初に区別したいこと
標準正規分布表
表の中に確率が入っている
t・χ²・F分布表
表の中に横軸の境界値が入っている
ここがポイント
付表を見るときは、まず 「表の中の数字が確率なのか、横軸の値なのか」 を確認する。
STEP 02

標準正規分布表は「Zから確率を探す」

まずは、 標準正規分布表です。

この付表では、 横軸の値 \(u\) に対応する 上側確率を調べます。

上側確率 Q(u) u 0

表の左側では \(u\) の小数第1位まで、 表の上側では 小数第2位を探します。

\(u\) .00 .01 .02
0.0 0.5000 0.4960 0.4920
0.1 0.4602 0.4562 0.4522
\(u=0.01\) を探す
左側:0.0
上側:.01
↓ クロス
上側確率 0.4960

実際の付表でも、 \(u=0.01\) に対する上側確率は \(0.4960\) です。

ここがポイント
標準正規分布表は、 「Zの値を探して、上側確率を読む」表。
STEP 03

標準正規分布では左右対称を利用する

標準正規分布は 0を中心に左右対称 です。

そのため、 付表には基本的に正の \(u\) だけが掲載されています。

-u 0 u 下側確率 上側確率

たとえば、 \(u=-0.01\) よりも下側の確率を知りたい場合には、 絶対値をとった \(u=0.01\) の上側確率を見ればよいことになります。

\(u=-0.01\) の下側確率
⇕ 左右対称
\(u=0.01\) の上側確率
0.4960

区間推定で頻繁に使う \(u=1.96\) については、 左側の1.9と上側の.06をクロスすると、 上側確率 \(0.0250\) と読めます。

\[ Q(1.96)=0.0250 \]
95%信頼区間で使った \(1.96\) とつながる
ここがポイント
標準正規分布は左右対称。
負の側は、絶対値をとった正の側から読み替えられる。
STEP 04

t分布表は「自由度と \(\alpha\) から t を探す」

次は、 t分布表です。

標準正規分布表との大きな違いは、 表の中に確率ではなく t の値が入っている ことです。

表側
自由度 \(\nu\)
表頭
上側確率 \(\alpha\)
↓ クロス
tの境界値
\(\nu\) \(\alpha=0.100\) \(\alpha=0.050\) \(\alpha=0.025\)
10 1.372 1.812 2.228
20 1.325 1.725 2.086

たとえば、 自由度20のt分布について、 上側確率5%となる境界を知りたい場合には、

自由度 \(\nu=20\)
上側確率 \(\alpha=0.05\)
\(t_{0.05}(20)=1.725\)
上側 \(\alpha\) \(t_\alpha(\nu)\)
ここがポイント
t分布表は、 「自由度+上側確率 → tの境界値」 を探す表。
STEP 05

カイ二乗分布表も「自由度と \(\alpha\) から探す」

カイ二乗分布表の基本的な読み方は、 t分布表とよく似ています。

表側: 自由度 \(\nu\)
表頭: 上側確率 \(\alpha\)
カイ二乗分布の境界値
\(\nu\) 0.99 0.95 0.05 0.01
20 8.26 10.85 31.41 37.57

たとえば自由度20のカイ二乗分布で、 上側確率5%点を探すと、

\[ \chi^2_{0.05}(20)=31.41 \]
ここがポイント
カイ二乗分布表も、 「自由度+上側確率 → 横軸の境界値」 を探す。
STEP 06

なぜカイ二乗表には 0.99 がある?

カイ二乗分布表を見ると、 表頭に \(0.99\)、\(0.975\)、\(0.95\) といった大きな上側確率も並んでいます。

これは、 カイ二乗分布が 左右対称ではない からです。

上側99%点 下側1% 右側には99%残る

「上側99%点」ということは、 その値より右側に99%の確率が残る点です。

逆から見れば、 その値より左側には1%しかない ということになります。

上側 99%
下側 1%を残す境界

ここで重要なのは、 「上側99%点」という表現が、 右側に99%の確率が残る境界 を意味していることです。

したがって、 同じ境界を左側から見れば、 下側に1%だけ確率が残る点 と考えることができます。

確率の見方
上側 99%
下側 1%
は、同じ境界を反対側から見ている

正規分布やt分布なら左右対称なので、 片側の境界がわかれば、 もう片側は符号を変えることで求められます。

しかしカイ二乗分布は左右非対称なので、 左側の境界も別に調べる必要があります

そのため、 カイ二乗分布表には \(0.99\)、\(0.975\)、\(0.95\) といった大きな上側確率も用意されています。

ここがポイント
上側99%点は、 下側に1%だけ残る位置。
非対称なカイ二乗分布では、 下側の境界を調べるためにも大きな上側確率が必要。
STEP 07

F分布は自由度が2つある

最後は、 F分布表です。

F分布で最も注意したいのは、 自由度が2つある ことです。

表頭
分子の自由度 \(\nu_1\)
表側
分母の自由度 \(\nu_2\)
Fの境界値

また、 今回のF分布表は、 上側確率 \(\alpha=0.05\) と \(\alpha=0.025\) が別々に用意されています。

表①
\(\alpha=0.05\)
表②
\(\alpha=0.025\)

たとえば、 分子の自由度が5、 分母の自由度が20、 上側確率が5%なら、

\(\nu_1=5\)
\(\nu_2=20\)
\(\alpha=0.05\)
\(F_{0.05}(5,20)=2.711\)
自由度の順番に注意
\(F(\nu_1,\nu_2)\) は、 最初が分子、 後が分母です。
ここがポイント
F分布表では、 「上に分子の自由度、左に分母の自由度」。
STEP 08

F分布の左側の境界はどう求める?

F分布もカイ二乗分布と同じように、 左右対称ではありません

そのため、 右側の境界がわかったからといって、 符号を変えるだけで左側の境界を求めることはできません。

しかも今回の付表には、 上側確率 \(0.05\) や \(0.025\) の表はありますが、 上側確率 \(0.95\) や \(0.975\) の表はありません。

たとえば「左側5%の境界」を知りたい
5% 知りたい境界 右側には95%

この「左側5%の境界」は、 上側確率で表現すると 上側95%点です。

左側 5%
上側 95%点

ところが、 付表には上側95%点が載っていません。

そこで使うのが、 F分布の逆数の性質です。

F分布の重要な性質
\[ F\sim F(\nu_1,\nu_2) \]
↓ 逆数をとる
\[ \frac{1}{F} \sim F(\nu_2,\nu_1) \]
逆数をとると、
分子と分母の自由度が入れ替わる

ここがポイントです。

もとのF分布で とても小さい値を考えているとき、 その逆数は とても大きい値 になります。

もとのF
小さい値
左側5%
逆数
\(1/F\)
大きい値
右側5%

つまり、 もとのF分布の左側5%問題を、 逆数を使って別のF分布の右側5%問題に変換できる ということです。

左側5%の境界を求める流れ
もとの分布で
左側5%の境界を知りたい
逆数を考える
自由度を入れ替えたF分布で
右側5%の境界 を付表から読む
読み取った値の逆数をとる
もとのF分布の左側5%の境界

これを式で表すと、

\[ F_{0.95}(\nu_1,\nu_2) = \frac{1}{F_{0.05}(\nu_2,\nu_1)} \]

です。

左辺の \(F_{0.95}(\nu_1,\nu_2)\) は、 もとのF分布の上側95%点、 つまり左側に5%だけ残る境界です。

右辺では、 自由度の順番を \(\nu_1,\nu_2\) から \(\nu_2,\nu_1\) に入れ替え、 付表にある 上側5%点 を読み、 最後に逆数をとっています。

上側97.5%点でも同じ

左側2.5%の境界を知りたい場合は、 自由度を入れ替えた 上側2.5%点 を使います。 \[ F_{0.975}(\nu_1,\nu_2) = \frac{1}{F_{0.025}(\nu_2,\nu_1)} \]
ここがポイント
F分布の左側の境界が必要なら、
「逆数にする → 自由度を入れ替える → 右側の付表を使う」。
最後にもう一度逆数をとれば、もとの境界に戻る。
STEP 09

4つの付表を見分ける

最後に、 4種類の付表の違いを 一気に整理しておきましょう。

標準正規分布表
入力:\(u\) の値
出力:上側確率
t分布表
入力:自由度+上側確率
出力:tの境界値
カイ二乗分布表
入力:自由度+上側確率
出力:χ²の境界値
F分布表
入力:分子自由度+分母自由度+上側確率
出力:Fの境界値
迷ったら最初に確認
① 何分布?
② 自由度はいくつ?
③ 上側確率はいくつ?
付表の対応する場所を見る
最後に
付表は暗記するものではなく、 「何が入力で、何が出力か」を区別して読む。
SUMMARY

付表の見方を整理する

標準正規
\(u\) から上側確率を読む
t分布
自由度+\(\alpha\) からtの境界値
χ²分布
自由度+\(\alpha\) からχ²の境界値
F分布
\(\nu_1,\nu_2,\alpha\) からFの境界値
非対称分布
χ²・Fでは左右を単純に符号反転できない
代表例
\[ Q(1.96)=0.025 \] \[ t_{0.05}(20)=1.725 \] \[ \chi^2_{0.05}(20)=31.41 \] \[ F_{0.05}(5,20)=2.711 \]
試験でのコツ
数値を探し始める前に、 「何分布か」「自由度はいくつか」「上側確率はいくつか」 を先に余白へ書き出しておくと、読み間違いを減らせます。
最後に
付表は「表側・表頭・表の中身」の役割を確認してから読む。
とくに標準正規分布表だけは、 表の中が「確率」であることに注意する。
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