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仮説検定の構造

仮説検定の全体構造を図で整理します。帰無仮説と対立仮説、検定統計量、有意水準、棄却域に加えて、第1種・第2種の過誤がどのように生じるのかを視覚的に理解していきます。
このページのゴール

仮説検定の構造を確率分布の図で捉え、検定統計量の実現値から帰無仮説を棄却する仕組みと、第1種・第2種の過誤の意味を説明できるようになる。

STEP 01

仮説検定の構造を図で理解する

前のレクチャーでは、 仮説検定の考え方を言葉で整理しました。

今回はさらに一歩進んで、 仮説検定の構造を確率分布の図で確認 していきます。

まず押さえておきたいのが、 図の横軸です。

横軸は「検定統計量」
検定統計量

検定統計量とは、 帰無仮説を検定するために、標本から計算する統計量 です。

実は、 区間推定でも似た計算をしてきました。

区間推定で登場した z・t・F などの値

仮説検定では 検定統計量 として使われる

図の縦軸は確率密度です。 つまり、 検定統計量がどの値をとりやすいか を分布として表しています。

まず確認
横軸は検定統計量。
標本から計算した z や t などの値を使って、 帰無仮説を検定する。
STEP 02

帰無仮説 \(H_0\) と対立仮説 \(H_1\)

仮説検定で最初に考えるのは、 前のレクチャーでも確認した 帰無仮説 \(H_0\) です。

一方、 帰無仮説と対立する仮説を 対立仮説 \(H_1\) と呼びます。

帰無仮説と対立仮説のイメージ
帰無仮説 H₀ 対立仮説 H₁
※対立仮説の世界は1つに限られません。 ここでは構造を理解するために、 対立仮説のうち1つを模式的に図示しています。

対立仮説は英語で alternative hypothesis と呼ばれ、 帰無仮説に代わる仮説という位置づけです。

仮説検定では、 まず帰無仮説 \(H_0\) を定め、 その帰無仮説を棄却できるかどうか を検討します。

帰無仮説は具体的に設定する

このレクチャーでは、 たとえば \[ H_0:\mu=0 \] \[ H_0:\mu=100 \] のように、 検定の基準となる値を具体的に定める場合を考えます。
主役は
仮説検定の出発点は帰無仮説 \(H_0\)。
対立仮説 \(H_1\) は、それと対立する世界を表す。
STEP 03

有意水準 \(\alpha\) と棄却域を決める

帰無仮説 \(H_0\) を定めたら、 次に考えるのが 有意水準 \(\alpha\) です。

有意水準は、 帰無仮説が正しいとした場合に 「これほど起こりにくければ、帰無仮説を疑おう」 と判断する基準となる確率です。

有意水準と棄却域
α 棄却しない領域 棄却域

有意水準には、

\[ \alpha=0.05 \] や \[ \alpha=0.01 \] などがよく使われます。

そして、 この有意水準に対応する 検定統計量の境界値 を求めます。

この境界よりも 起こりにくい側を 棄却域 と呼びます。

一方、 境界よりも起こりやすい側は、 このレクチャーでは 棄却しない領域(受容域) と呼びます。

境界値は付表から探せる
この境界は、 区間推定で使ってきた 上側%点と同じ考え方です。
ここがポイント
有意水準 \(\alpha\) を決めると、 帰無仮説を棄却するための 「棄却域」を設定できる。
STEP 04

標本から検定統計量の実現値を計算する

ここまでで、 帰無仮説と有意水準、 そして棄却域を設定できました。

次に、 実際に観測された標本データから 検定統計量 を計算します。

標本から実際に計算された 検定統計量の具体的な値を、 検定統計量の実現値 と呼びます。

実現値がどこに入るかを見る
実現値 棄却域

あとは、 この実現値が 棄却域に入るかどうか を確認します。

実現値が棄却域に入る
→ 帰無仮説 \(H_0\) を棄却する
実現値が棄却域に入らない
→ 帰無仮説 \(H_0\) を棄却しない
判定方法
標本から計算した検定統計量の実現値が、 棄却域に入るかどうかを見る。
STEP 05

第1種の過誤|正しい \(H_0\) を棄却してしまう

ここで重要なのが、 仮説検定には 誤った判断をしてしまう可能性 があることです。

まず、 帰無仮説 \(H_0\) が 本当は正しいとします。

それでも、 確率 \(\alpha\) の領域に 偶然データが入ることはあります。

第1種の過誤
α H₀ が正しい世界

このとき、 本当は帰無仮説が正しいにもかかわらず、 実現値が棄却域に入ったために 誤って帰無仮説を棄却 してしまいます。

第1種の過誤

帰無仮説 \(H_0\) が本当は正しい

それなのに \(H_0\) を棄却してしまう

その確率が \(\alpha\)
αのもう1つの意味
有意水準 \(\alpha\) は、 第1種の過誤が生じる確率でもある。
STEP 06

第2種の過誤|誤った \(H_0\) を棄却できない

反対方向の誤りもあります。

今度は、 帰無仮説 \(H_0\) が正しくなく、 対立仮説 \(H_1\) の世界が正しい と考えます。

ところが、 対立仮説の分布にも、 帰無仮説の棄却しない領域と重なる部分があります。

第2種の過誤
β H₀ H₁

この \(\beta\) の領域に実現値が入ると、 本当は対立仮説の世界が正しいにもかかわらず、 帰無仮説を棄却できません。

第2種の過誤

帰無仮説 \(H_0\) は本当は正しくない

それなのに \(H_0\) を棄却できない

その確率が \(\beta\)
βの意味
\(\beta\) は、 本当は帰無仮説が正しくないのに、 それを見抜けない確率。
STEP 07

「棄却されなかった」=「正しい」ではない

第2種の過誤を考えると、 仮説検定で非常に重要な注意点が見えてきます。

検定統計量の実現値が 棄却域に入らなかった場合、 帰無仮説は 棄却されません

しかし、 だからといって

「帰無仮説 \(H_0\) が正しいことが証明された」

と考えることはできません。

なぜなら、 対立仮説が正しい世界でも、 確率 \(\beta\) で 棄却しない領域にデータが入る可能性があるからです。

棄却された
→ 帰無仮説に対して反証する方向の証拠が得られた
棄却されなかった
→ 帰無仮説を棄却するだけの証拠が得られなかった

特に、 \(\beta\) は有意水準 \(\alpha\) のように 検定手続きの中で直接設定される値ではありません。

そのため、 帰無仮説が棄却されなかった場合には、 「帰無仮説が正しい」と強く主張しない ことが大切です。

とても重要
「棄却しない」と 「帰無仮説が正しい」は同じではない。
STEP 08

仮説検定の構造を1枚で整理する

最後に、 ここまで見てきた要素を 1つの図にまとめます。

仮説検定の全体構造
α β 帰無仮説 H₀ 対立仮説 H₁ 棄却しない領域 棄却域 検定統計量 →
\(\alpha\):第1種の過誤
本当は \(H_0\) が正しいのに、 \(H_0\) を棄却してしまう。
\(\beta\):第2種の過誤
本当は \(H_0\) が正しくないのに、 \(H_0\) を棄却できない。
この図で整理
帰無仮説・対立仮説・有意水準・棄却域・実現値・ 第1種と第2種の過誤は、 すべて同じ仮説検定の構造の中にある。
SUMMARY

仮説検定の構造を整理する

帰無仮説
検定の出発点となる \(H_0\)
検定統計量
標本から計算し、 帰無仮説を検定するために使う値
有意水準
帰無仮説を棄却する基準となる確率 \(\alpha\)
実現値
観測された標本から 実際に計算された検定統計量
判定の流れ
帰無仮説 \(H_0\) を設定
有意水準 \(\alpha\) を決める
棄却域を決める
検定統計量の実現値を計算
棄却域に入るか確認
第1種の過誤
正しい \(H_0\) を棄却してしまう。
確率: \(\alpha\)
第2種の過誤
誤った \(H_0\) を棄却できない。
確率: \(\beta\)
特に重要
帰無仮説が 棄却されなかった からといって、 帰無仮説が正しいことが証明されたわけではありません。
最後に
仮説検定は、 帰無仮説 \(H_0\) の世界を基準として、 検定統計量の実現値が 「どこに現れたか」を判断する仕組み。

その判断には必ず \(\alpha\) と \(\beta\) という2種類の誤りの可能性がある。
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