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重回帰式

単回帰では1つの説明変数から被説明変数を説明しました。重回帰では説明変数を複数に増やし、それぞれの影響を同時に考えながら被説明変数との関係を式で表します。このレクチャーでは、偏回帰係数の意味、最小二乗法による推定、重回帰式が重心を通る性質を整理します。
このページのゴール

重回帰式の構造と偏回帰係数の意味を理解し、残差平方和を最小にする最小二乗法によって係数が推定されること、さらに定数項を含む重回帰式が変数の平均からなる点を通ることを説明できるようになる。

STEP 01

単回帰から重回帰へ

ここからは、 線形モデル について見ていきます。

まず学ぶのが 重回帰式 です。

単回帰では、 1つの説明変数 \(x\) と 被説明変数 \(y\) の関係を

\[ \hat y_i = \hat\beta_0+\hat\beta_1x_i \]

のような回帰直線で表しました。

重回帰では、 説明変数を複数に増やして、

\[ \hat y_i = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_{1i} + \hat\beta_2x_{2i} +\cdots \]

と表します。

単回帰
説明変数が1つ
重回帰
説明変数が2つ以上

説明変数が2つになると、 図では3次元以上の空間を考える必要があります。

そこで今回は、 無理に立体図を描くのではなく、 表と式を使って整理 していきます。

重回帰とは
複数の説明変数を同時に使って、 被説明変数 \(y\) との関係を記述する。
STEP 02

家賃・広さ・駅徒歩のデータを考える

例として、 ある地域にある4部屋の賃貸住宅について、 次のデータが得られたとします。

\(i\) 家賃 \(y\) 広さ \(x_1\) 駅徒歩 \(x_2\)
1 6万円 15㎡ 10分
2 9万円 18㎡ 6分
3 7万円 21㎡ 12分
4 10万円 24㎡ 9分

今回は、

被説明変数
家賃 \(y\)
説明変数1
部屋の広さ \(x_1\)
説明変数2
駅までの徒歩時間 \(x_2\)

として、 広さと駅徒歩から家賃を説明する 重回帰式を考えます。

今回のモデル
「広さ」と「駅徒歩」という2つの説明変数で、 「家賃」を説明する。
STEP 03

重回帰式の3つの係数を確認する

説明変数が2つの場合、 重回帰式は

\[ \hat y_i = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_{1i} + \hat\beta_2x_{2i} \]

と表せます。

\(\hat\beta_0\)
定数項
\(\hat\beta_1\)
広さ \(x_1\) にかかる偏回帰係数
\(\hat\beta_2\)
駅徒歩 \(x_2\) にかかる偏回帰係数

これらの係数を、 手元のデータから推定していきます。

STEP 04

「偏回帰係数」の「偏」とは何か

重回帰では、 \(\beta_1,\beta_2\) を 偏回帰係数 と呼びます。

この 「偏」 が重要です。

英語では partial で、 「部分的な」というニュアンスがあります。

\(\beta_1\) の意味
駅徒歩 \(x_2\) を 固定
広さ \(x_1\) が1単位増える
予測値 \(\hat y\) が \(\hat\beta_1\) だけ変化

説明変数どうしには、 相関がある場合があります。

そのため、 \(x_1\) が変わるときに \(x_2\) まで一緒に変わってしまえば、 \(y\) の変化を \(x_1\) だけの影響とは言えません。

偏回帰係数を読むときの重要な枕詞

他の説明変数を固定したときに
偏回帰係数
他の説明変数を固定したうえで、 ある説明変数だけが1単位変化したときの \(\hat y\) の変化量を表す。
STEP 05

各部屋について予測値 \(\hat y_i\) を考える

では、 重回帰式

\[ \hat y_i = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_{1i} + \hat\beta_2x_{2i} \]

を使って、 4部屋それぞれについて 予測家賃を考えます。

\(i\) 実測値 \(y_i\) 予測値 \(\hat y_i\) 残差 \(e_i\)
1 \(y_1\) \(\hat y_1\) \(y_1-\hat y_1\)
2 \(y_2\) \(\hat y_2\) \(y_2-\hat y_2\)
3 \(y_3\) \(\hat y_3\) \(y_3-\hat y_3\)
4 \(y_4\) \(\hat y_4\) \(y_4-\hat y_4\)

実際の家賃 \(y_i\) と 重回帰式による予測値 \(\hat y_i\) の差が 残差 です。

\[ e_i = y_i-\hat y_i \]
STEP 06

最小二乗法で係数を推定する

回帰直線のときと同じように、 重回帰でも 最小二乗法 を使います。

まず、 各データについて残差を二乗します。

\[ e_i^2 = (y_i-\hat y_i)^2 \]

それをすべて足し合わせたものが 残差平方和 です。

\[ \sum_{i=1}^{n} (y_i-\hat y_i)^2 \]
定数項・偏回帰係数を仮定
各部屋の \(\hat y_i\) を計算
残差 \(y_i-\hat y_i\) を計算
残差平方和を計算
残差平方和が最小になる \(\hat\beta\) を選ぶ
最小二乗法
残差平方和が最小になるように、 定数項と偏回帰係数を推定する。
STEP 07

今回のデータから得られる重回帰式

4部屋のデータについて、 最小二乗法で係数を推定すると、 次の重回帰式が得られます。

\[ \hat y_i = 5.29 + 0.39x_{1i} – 0.52x_{2i} \]
定数項
\(\hat\beta_0=5.29\)
広さの偏回帰係数
\(\hat\beta_1=0.39\)
駅徒歩の偏回帰係数
\(\hat\beta_2=-0.52\)

さまざまな係数の組み合わせの中で、 この値を使ったときに 残差平方和が最小 になります。

STEP 08

偏回帰係数をどう解釈する?

たとえば、 広さにかかる偏回帰係数は

\[ \hat\beta_1=0.39 \]

でした。

これは、

駅徒歩を固定したときに、
広さが1㎡増えると、
予測家賃が 0.39万円高くなる

という意味です。

同様に、 駅徒歩の偏回帰係数

\[ \hat\beta_2=-0.52 \]

は、

広さを固定したときに、
駅徒歩が1分増えると、
予測家賃が 0.52万円低くなる
必ず意識する
偏回帰係数を解釈するときは、 「他の説明変数を固定したときに」 という条件を忘れない。
STEP 09

重回帰式も「重心を通る」

今回のデータについて、 3つの変数の平均を計算すると、

\[ \bar y=8 \]
\[ \bar x_1=19.5 \]
\[ \bar x_2=9.25 \]

です。

今回の重回帰式は、 平均からの差を使って

\[ \hat y_i = 8 + 0.39(x_{1i}-19.5) – 0.52(x_{2i}-9.25) \]

と書き直せます。

ここで、

\[ x_{1i}=19.5, \qquad x_{2i}=9.25 \]

とすると、 かっこの中はすべて0になり、

\[ \hat y_i=8=\bar y \]

となります。

重心を通る
説明変数がすべて平均値なら、 予測値も被説明変数の平均になる。
STEP 10

重心を通る性質を一般式で確認する

定数項を含む通常の最小二乗法で推定した重回帰式は、 一般に

\[ \hat y_i = \bar y + \hat\beta_1(x_{1i}-\bar x_1) + \hat\beta_2(x_{2i}-\bar x_2) +\cdots \]

と表せます。

すべての説明変数を それぞれの平均値にすると、

\[ x_{1i}=\bar x_1,\quad x_{2i}=\bar x_2,\quad\ldots \]

なので、

\[ \hat y_i=\bar y \]

となります。

つまり

重回帰式は、 \[ (\bar x_1,\bar x_2,\ldots,\bar y) \] という 各変数の平均からなる点 を通ります。

これは、 単回帰で学んだ 「回帰直線は重心を通る」 という性質の重回帰版です。

STEP 11

説明変数を増やすと残差平方和はどうなる?

最後に、 次のレクチャーにつながる重要な性質を確認しておきます。

たとえば、 もともと

\[ \hat y = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_1 \]

というモデルがあったところに、 新しく \(x_2\) を加えて

\[ \hat y = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_1 + \hat\beta_2x_2 \]

としたとします。

もし \(x_2\) を追加しても役に立たないなら、

\[ \hat\beta_2=0 \]

とすれば、 元のモデルと同じ状態に戻せます。

説明変数を追加
残差平方和は 増えることはない

すると、 「残差平方和を小さくしたいだけなら、 説明変数をどんどん増やせばよいのでは?」 という疑問が生まれます。

この問題を考えるうえで登場するのが、 次のレクチャーで学ぶ 自由度調整済み決定係数 です。

次のテーマへ
説明変数を増やせば残差平方和は増えない。
だからこそ、 「説明変数を増やしたこと」自体を考慮する指標が必要になる。
SUMMARY

重回帰式を整理する

重回帰式
\[ \hat y_i = \hat\beta_0 + \hat\beta_1x_{1i} + \hat\beta_2x_{2i} +\cdots \]
偏回帰係数
他の説明変数を固定したときの、 説明変数1単位の変化に対応する予測値の変化
推定方法
残差平方和を最小 にする最小二乗法で \(\hat\beta\) を推定
重心
定数項を含む最小二乗法では、 各説明変数が平均なら \(\hat y=\bar y\)
今回の推定結果
\[ \hat y_i = 5.29 + 0.39x_{1i} – 0.52x_{2i} \]
重心を通る形
\[ \hat y_i = \bar y + \hat\beta_1(x_{1i}-\bar x_1) + \hat\beta_2(x_{2i}-\bar x_2) +\cdots \]
特に重要な3点
① 偏回帰係数は「他の説明変数を固定して」解釈する
② 重回帰でも最小二乗法で係数を推定する
③ 説明変数を追加しても残差平方和は増えない
最後に
重回帰は単回帰とは別物ではなく、 「説明変数を複数に拡張した回帰モデル」。

残差を小さくする最小二乗法という基本構造は、 単回帰と同じです。
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